17 August 2006

The Last Mitterrand

The Last Mitterrand by Robert Guediguian 2005 France

癌に冒され余命僅かとなった1981−95年までフランス大統領を努めたミッテラン(Michael Bouguet)は30歳の若いジャーナリストAntoine (Jalil Lespert) を自伝執筆に任命する。この映画の殆どはミッテランの社会主義的政策をはじめド・ゴールとのライバル心、彼の政治哲学を自らが語ったものだが、一方 Antoineはミッテランの初期加入していた反ユダヤ・ファシスト団体アクション・フランセーズについて、また多くのユダヤ人をドイツに引き渡したヴィ シー政権の責任などについても追求する。

ミッテランは映画の中で「フランスを色に例えると灰色だ、灰色は様々な色彩をもっている。ラベンダーの灰色、森林の灰色・・・」と語っている様、この映画 のトーンも灰色で撮影されている。(えっラベンダーは灰色?フランスが灰色とは面白い事を言う人だと思ってしまいました)

個人的にミッテラン大統領そして当時のフランス社会にあまり詳しくないので、この映画の詳細を理解するのに多少苦労した。しかしながらミッテランの語りは様々の面で造詣が深く非常に興味深いものがあった。

ミッテランを演じたMichael Bouguet は容姿がとても似ている。この映画を見た知り合いにいわせれば挙動もかなり似ているそうだ。

歴史的人物を主題とした映画は枚挙にいとまがないが、この作品では人生を終えようとしているミッテランとミッテラン政権を経験していない世代の若い Antoineが当事者を通して激動の時代を理解しようとするミニマムな設定の中、ミッテランという主人公が大きく浮き彫りされた作品であった。見応えは 抜群です。

1 comment:

claudiacardinale said...

Commented by J.T. at 2006-08-18 00:57 x
今、ミッテラン元大統領の略歴を観てましたが、なかなか波乱万丈の生涯だったようですね。 1916年10月26日生まれ、 1996年1月8日没ですし、フランスの20世紀を生き抜いた!というような印象を受けました。気になる作品、観てみたい作品です。

Commented by claudiacardinare at 2006-08-21 17:58
J.Tさん、この作品って資本主義一辺倒のアメリカとは違ったフランス/欧州の空気が味わえます。そういえばミッテランって親日派で確か日本人の女性との間に子供がいたような。(不確かです)

Commented by Count_Basie_Band at 2006-08-24 08:44
これは観たい!
でも日本じゃ受けそうもありませんね。

Commented by claudiacardinare at 2006-08-27 21:55
CBさん、どうなんでしょう?たしかに日本で公開されても人が入りそうにありませんね。もしかしたら既にDVDで出ているかもしれませんね。

Commented by Count_Basie_Band at 2006-08-28 04:50
CCさん

何かの都合または好奇心からWorld War II以後の欧州をウォッチしている人を除くフツーの日本人にとっては「Mitterrand, who?」ですよ。関心を集めた欧州人はPrincess Dianaとその亭主ぐらい。
お勧めに従ってDVDをチェックしてみます。

Commented by Bianca at 2006-09-01 11:36 x
「灰色」を英和・仏和辞典で見たら、あるわあるわ、日本人には思いつかないほどの豊かな世界が・・・積極的にいい意味で使われていました。老人パワーとか、知力とか、服地のさまざまな色とか。勉強になりました。
ミッテランって、隠し子がいたとかいう話題が取りざたされた記憶がありますが、本国では「それがどうした」だそうで、これもまた、日本とは遠い世界です。

Commented by claudiacardinare at 2006-09-01 18:57
Biancaさん、以前仏人の友達数人に隠し子の話をしたら「ありえる、ありえる」と笑ってました。やっぱりアメリカとは違いますね。
「灰色」の情報ありがとうございました。私も勉強になります。ミッテランは社会主義派のバックグラウンドなのでそれが関係しているのかなと思っていました。確かに知力を色で表すと灰色がしっくりくる気がします。

Commented by oscar_pittarison at 2006-09-03 21:56
>反ユダヤ・ファシスト団体アクション・フランセーズ

1930年代に日本の獄中にいたコミュニストたちは、新聞の差し入れなどで国際情勢を知っていたらしい。その中ではミッテランは悪い奴の一人でしかなかったようです。反動的でロクな奴じゃない、という評価です。

Commented by claudiacardinare at 2006-09-06 18:24
O.Sさん、政治家の評価とはどういう視点を重視したらいいのでしょう?総括的?私はミッテランに関してあまり詳しくないのでなんとも言えませんが、白黒では語れませんよね。だからといってヒットラーや東条が肯定される余地はないのですが・・・私の持つマーガレット・サッチャーの認識がイギリスに来て一般の英国人が持つ評価とえらく違うのに気づきました。

Commented by Count_Basie_Band at 2006-09-07 05:57
>私の持つマーガレット・サッチャーの認識がイギリスに来て一般の英国人が持つ評価とえらく違うのに気づきました。

そこんところ、いずれ具体的にお教えいただけると有難いのですが..
周辺のUK人の間でも評価が分かれいます。

Commented by oscar_pittarison at 2006-09-08 23:18
>政治家の評価とはどういう視点を重視したらいいのでしょう?

1930年代の社会民主主義政党は挙ってファシスト政権に賛意を表明しました。ヨーロッパ・ロシア・日本でも全く同じだった。現れ方は国によって違いますが。
だからコミュニストにとっては「敵」でしかなかったんです。政治に限れば総括的にしか判断できません。「動」と「反動」しかない。政治権力を持ってた方にとっても当然そういう判断をせざるを得ない。当時は、ですよ。
だって国を挙げて戦争してる時に「侵略戦争反対!」というだけで逮捕され拷問され、殺されるかもしれない、という状況では「灰色」はありえないでしょう。政治権力を握ってた方も同じです。「灰色」はスパイに直結してたんです。「お前はアカか?」 どちらにとってもそうだった。戦争とはそういう判断を個人に強いる状況です。非常に単純な思考しか許されなくなる。
この時代は世界が狂ってたとしか言いようがないですね。今またそのような状況に・・・。コワイです。
だから「灰色」もある、ということが大きな声で言えるのは平和な証拠なんです。マルクスだって私生児を産ませ、エンゲルスが必死にそれを隠そうとしてた。況やミッテランをや、ですかな。

Commented by claudiacardinare at 2006-09-14 18:02
CBさん、お返事遅くなりました。回りのイギリス人達はほぼサッチャーはイギリスの産業をダメにした、福祉厚生を軽く扱ったとネガティブの評価です。で私は痛手を伴った改革があってこそ今の景気があるのでは?と聞くと、国内産業をカットオフする必要性はなかった、なぜなら・・・と長い説明が続くのです。私はアメリカ生活が長かったのでこの国の福祉厚生はまだいい方と思えるし、政府が保護しないからと自然淘汰されていくビジネスはそのようなものだと思えます。勿論その後の対処が重要になってくるのですが。多分日本はこの経緯を現時点辿っているように見えます。まあサッチャーはフォークランドまで行く必要はなかったとは思いますが。けど今のイギリスはバブル期の日本の状態です。

Commented by claudiacardinare at 2006-09-14 18:08
OSさん、確かに「灰色」を理解出来る状況というのはある意味で成熟した社会ですね。OSさんのレスを読みながらフロイトの経緯を思い出しました。物理的戦争ではないけれど学会から総反対にあったフロイトは彼の論理を極限化することによって反撃、だから彼の論理はあそこまで極端だと私は当時理解していました。(もしかしたら全く間違っているかもしれませんが)

Commented by Count_Basie_Band at 2006-09-15 11:46
CCさん、ありがとうございます。

>国の福祉厚生はまだいい方と思えるし、

労働者保護を含めて、最近の日本に比べれば天国のはずですよ。日本政府は高齢者が医療を受けられないようにして人口構成を若返らせようとしています。

>政府が保護しないからと自然淘汰されていくビジネスはそのようなものだと

私が解説をおねだりしたのは、まさにこの点について身近な体験があるからなのです。私が勤めていた会社が在ロンドンの超老舗企業を買収しました。こちらから買収を仕掛けたのではなく、彼女が、首相自らが「買ってくれ」と言って来たのです。そして契約調印の日には彼女自身が私の会社にやってきました。プロスポーツ選手や映画スターがやってくるのは日常茶飯だったのですが、英国首相とは...

前後しますが、
>ネガティブの評価です。

フーン。彼女の先代までの政権が何をやったのか、どんな社会を作っていたのか、国民自身には評価できないものなんでしょうね。

>日本はこの経緯を現時点辿っているように見えます。

まだ道半ばでしょう。役割を終えたビジネスに対する無意味な延命策が続けられています。

Commented by claudiacardinare at 2006-09-15 23:54
CBさん、>日本政府は高齢者が医療を受けられないようにして人口構成を若返らせようとしています
これはすごいですね・・・けど裏を返せば若い女性が子供を作りたがらない現社会構造ですよね。日本の自立している女性の友人達は子供をつくろうという意識が全く無いです。

Commented by Count_Basie_Band at 2006-09-16 10:48
>日本の自立している女性の友人達は子供をつくろうという意識が全く無いです。

私の友人たちのお嬢さん方は、例えばUNの管理職、有名ファッション・ブランド企業のCEOなんかになっているので、事実婚はしても法的に婚姻して子供を作る様子はまったくなし。
私のセガレは主として雑誌の注文で文章(CCさんの隣接分野)を書いて生計を立てていますが、彼の取材対象や周辺の編集部の女性たちも同様。
これでは高齢者の医療費負担をいくら増やしたって人口構成がピラミッドになる日はきませんよ。

Commented by Bianca at 2006-09-16 16:49 x
懐かしい言葉を聞きました!私が小学生のころ、日本の人口構成はピラミッド型、ヨーロッパの先進国は玉ねぎ型、中間のアメリカ?は釣鐘型、なんて、教科書に出ていたのを思い出します。それが、あっという間に、この始末ですものね。なんて、ひと事のように言っているわたしも、子供を作らなかった組で、大きな顔はできませn。

Commented by Count_Basie_Band at 2006-09-17 16:25
CCさん、Biancaさん、

1945年、台湾と朝鮮半島をを分離した後の人口は7,000万人でした。日本列島の居住可能な土地の面積からすればその程度が適正水準だと私は思っています。
人口がそこまで減れば、エネルギー、食料などの必要量も減ります。役人や教条主義的評論家は税収が減るとか何とかヘチャムクレを述べ立てますが、すべてを身の丈に合わせればいいんですよ。
かえって心豊かな社会になるような気がします。
私はいませんが(笑)。

Commented by oscar_pittarison at 2006-09-29 14:49
「灰色」問題に私なりの解答をやっと書き出しました。お暇なときにでも私の最近のブログを見ていただければ幸いです。

Commented by claudiacardinare at 2006-09-29 17:54
OPさん、ブログみました。もう一度じっくり読んでから、というかもう一度じっくり読んでみたいので改めてお返事致します。