29 April 2020

MET at Home Gala

@ Metropolitan Opera
Peter Gelb, Yannick Nezet-Seguin etc

4月25日に行われたメトロポリタン・オペラ主催オンライン・ガラ。Covid-19の猛威に世界中のオペラハウスがクローズしている中、METは約四十人のオペラ歌手とMETオーケストラによる音楽リレーを行った。オペラ好きの友人とチャットも同時にしながらとても楽しめてあっという間に4時間が終わってしまった。当然ながら各オペラ歌手やミュージシャンは自宅からの参加で、あらっこの人こんな家に住んでるのね、と部屋の中の覗き見もできてなかなか楽しい。ディアナ・ダムラウは台所から歌ったり、この指揮者とこのシンガーは実はできてたんだという発見もあったり、歌手陣の人間性も大いに見れ、それはそれはエンターテイメント性のあるユニークなガラ。エンターテイメント性といえばロベルト・アラーニャとアレクサンドラ・クルジャックの夫婦、ドニゼッティの「愛の妙薬」からララの二重奏を歌ったのだがとにかく二人の演技力というかアラーニャのコミカルな演技には大いに笑わせてもらった。髪の毛がボサボサに伸びきったカウフマンは流石に上手く、すでに夜中を回っていたスイス・チューリッヒから参加した、ROHでもハイCのアンコールをしてくれたハビエル・カマレナはアパートの住人から夜中歌う許可をもらって、もちろん得意のハイCでベッリーニの「海賊」を歌った。MET常連歌手、売り出し中歌手と勢揃い。大トリのネトレプコは家からでなく既に録画されたもの、Home Gala というコンセプトを無視してでもディーバという立場を死守。METオーケストラはワーグナーのローエングリンやカヴァレリア・ルスティカーナをフルオーケストラで演奏。またCoivd-19で亡くなった団員の一人に捧げる為に演奏したヘンデルのオンブラ・マイ・フではじわっと熱いものがこみ上げた。という事でこんな非常事態だからできたユニークで新しい形のコンサートであった。劇場などはいつになったらオープンするのやら、この先新しいエンターテイメントの手法が多く試されることになるのだろう。

25 March 2020

L'Eclisse / 太陽はひとりぼっち

by Michelangelo Antonioni 1963 Italy

第15回カンヌ審査員特別賞、アントニオーニの「愛の不毛三部作」の1つ、モニカ・ヴィッティとアラン・ドロン主演の「太陽はひとりぼっち」。婚約者と別れたヴィットリア(モニカ・ヴィッティ)の送る日々は意味もなくただ月日が流れていくだけ、証券マンのピエロ(アラン・ドロン)と恋仲となるが、それもただの表面上の付き合い。。。と話はラブストーリー仕立てなのだが何かが違う、どんよりと倦怠感に覆われた映画なのだ。画面に映し出されるヴィットリアの表情は魂が抜けたようで、彼女の行動は状況に押されてただ単に動かされているかのよう。またピエロの顔も美形がゆえ凍りついたように表情がない。また60年代郊外に多く建てられた無機質で近代的な建築物がロケーションに多く使われている。第二次世界大戦後、世界経済市場でもほとんど前例のない高度経済成長を遂げる近代社会が人間の心に及ぼす弊害がこの作品のバックボーン。それにしてもモニカ・ヴィッティはモノクロ作品に映し出されるとその魅力が倍増する女優だ。

8 March 2020

Fidelio / フェデリオ

 @ Royal Opera House
作曲:Ludwig van Beethoven
演出:Tobias Kratzer
指揮:Antonio Pappano

ベートーベンの唯一のオペラ「フェデリオ」、ヨナス・カウフマンがフロレスタンということでまたチケット争奪戦。普段より一段と値段はお高め。期待高々に行ったのだが「金返せ〜」と言いたくなるプロダクションであった。カウフマン目当てで観に行ったというのもあるのだが、このプロダクション全くというほど彼の魅力が発揮できない演出。まあ歌は勿論上手いのだが。。。お話は政治犯として拘禁されているフロレスタンを助けるために妻のレオノーレが「フェデリオ」という男性に変装して監獄に忍び込むというもの。この妻レオノーレを歌ったのはリセ・ダビドセン、多分身長が2メートル近くあるのか舞台上で飛び抜けて背が高い。歌は上手いがそれ以上に声量がすごく確実にワーグナー向き。演技は繊細な感じなし。残念ながらこの舞台では彼女の存在感があまりにも大きくなってしまい、またいまいちな演出の為に「ワンダーウーマン、惨めな旦那を救出」という感じになってしまった。せっかくのカウフマンだったのに残念な舞台であった。

22 February 2020

Pavarotti / パパロッティ 天才は永遠に

by Ron Howard 2019 USA

キング・オブ・ハイCで知られるオペラ歌手ルチアーノ・パパロッティ、映画監督のロン・ハワードがバイオグラフィー・ドキュメンタリーを制作。カラフルなキャラクターで知られるパパロッティをロン・ハワードが描くとなるとこれは面白くないはずがない、という先入観で見たが期待は全く裏切られなかった。イタリアのパン屋でアマチュア・テノール歌手の父を持ち、幼少時にはサッカー選手を夢見ていたが、母親の勧めで学校の先生となるが、音楽コンクールで優勝、その後「ラ・ボエーム」のロドルフォ役でデビューして以来着実にキャリアを築く、またオペラ以外でもロック歌手とのコラボなど幅広く活躍した。このドキュメンタリーではオペラ歌手としてのパパロッティ、家族、マネージメント、ビジネスなども取材し興味深い。しかしながらやはりパパロッティ自身のチャーミンな性格とユーモアがとてもいい、どんな苦境の場面でもパパロッティ節で切り抜けていく、見ている者を暖かく安心させてくれる感がある。まあ恰幅のいい体と人を安心させる顔つきそしてイタリア的愛嬌のある性格の要素が大きいのだろう。
メトロポリタン・オペラ・ハウスで何度かパパロッティの舞台を見たことがあるが、今ではあの貫禄のある姿を映像でしか見れないのはなんとも寂しいものだ。年老いた私の母親は東京ドームで見た三大テノールを今でも時々思い出しては話している。まあ彼女の場合はホセ・カレーラス狙いだったのだが。。この母にこの作品のDVDをプレゼントしようと思い探したが残念ながら英語版しか出てないようだ。

21 February 2020

Porgy and Bess / ポーギーとベス


@ Metropolitan Opera
作曲 : George Gershwin
演出 : James Robertson
指揮 : David Robertson

新プロダクション、ガーシュインのオペラ「ポーギーとベス」、今期メトロポリタンオペラで大ヒットとの事で、運よくNYに居たので早速見に行ってきた。1920年代アメリカ南部に住む虐げられた黒人の生活がテーマ、キャストは刑事一人を除き全て黒人。この作品にはサマータイムやI Got Plenty o'Nuttinなど好きなジャズスタンダードが盛りだくさん。ポーギーを歌ったEric OwensとベスのAngel Blueのコンビは力強く素晴らしい歌唱力だった。
「ポーギーとベス」はもともと1935年にボストンそしてNYブロードウェイで上演されたもの。その後米国北部各地を回り、ワシントンDCのナショナルシアターでは初めての黒人と白人の入り混じった観客席が設けられたという。当時の社会的背景を考えるとこの作品は画期的なものであり、原作者のDuBose とDorothy Heyward夫妻、ガーシュインの兄アイラ、そしてガーシュインの勇気は計り知れないものだ。また作品自体も素晴らしい。とにかくやはりガーシュインは本場アメリカのNYで見るのがいい。黒人オペラ歌手の層の厚さもつくづく感じることができた。

25 January 2020

1917 / 1917 命をかけた伝令

by Sam Mendes 2020 UK/USA

サム・メンデス監督の新作「1917」、1917年4月第一次世界大戦中ほぼ遂行不可能なミッションを課される二人のイギリス人将兵の話である。西部戦線の前線を進行していくイギリス軍連隊1600名、ドイツ軍が後退した後を追うが実はこれは仕掛けられた罠であった。いかなる連絡方法が寸断され、この1600名の命を虐殺から救う為、この連隊を率いるマッケンジー大佐に早急にメッセージを届ける任務を任されたトム(ディーン・チャールズ・チャップマン)とウィル(ジョージ・マッケイ)は連合軍とドイツ軍の間に広がるNo Man's Land / 無人地帯を突き進んでいく。

作品全体がまるでワンテイクの様に撮影されている。特に塹壕内を突き進んでいくこの二人の若い将兵を追うカメラワークは見事で、あたかも見ているものの目の前で起こっているかの様である。とにかくDPのRoger Deakinsのカメラワークは素晴らしいものであった。話の方は、最後の部分が多少ながら夢物語的になってしまい個人的にはイマイチとなってしまった。

西部戦線はベルギー北海からフランスのスイス国境まで続く広範囲に渡るものであった。100万人が犠牲となったソンヌの戦いもこの西部戦線である。この作品でも死傷者がいたるところに無残に転がっている戦闘跡、破壊された村々、川辺に重なり合う死体と目を覆いたくなるシーンだらけだ。本当にこんな時代に生まれなくてよかったとつくづく思わせる作品であった。

18 December 2019

Rocco and His Brothers / 若者の全て

by Luchino Visconti 1960 Italy

先日観たオペラ「ベニスに死す」の影響からか久々にビスコンティの「若者の全て」が観たくなった。かなり昔に観た以来なので内容はうろ覚え状態。キャストにアラン・ドロンやクラウディア・カルディナーレ、アニー・ジラルド、音楽にニノ・ロータとその豪華さに驚いた。流石ビスコンティ、モノクロながらも若さに力がみなぎる男兄弟達が鮮明に描かれていた。特に若かりし頃のアラン・ドロンのストイックな魅力がなんともいい感じ。南イタリアのプーリアから息子長男を慕ってミラノに移住した未亡人の母とその4人の息子達の生き様が描かれている。どこの国もどの家族も同じ様に、兄弟の性格はそれぞれに違っている。長男は普通に家庭を持って暮らし、次男はボクサーとして成功すると思いきや女にハマりどん底に、三男は正統派で独学高校卒業単位を得て定職、アラン・ドロン演じる四男ロッコはストイックで真面目であくまでも優しい性格だがボクサーとして頭角を表し勝利を次々と収め、まだ子供の五男は上の兄達の姿を見ながら成長していく。貧困のイタリア南部そして産業化で発展する裕福な北部の対比、そして労働階級の厳しさを描いた社会派の作品であり、ネオレアリズモを継承している。
ボクシングのシーンが多くあるのだが、スコセッシの「レイジング・ブル」は多分ここからインスピレーションを受けたと思える。やはり昔のイタリア映画はいいなぁと実感した。

15 December 2019

Death in Venice / ヴェニスに死す

@Royal Opera House
作曲 : Benjamin Britten
演出 : David McVicar
指揮 : Richard Farnes

トーマス・マン原作、ルキノ・ビスコンティ演出で有名な映画「ベニスに死す」、マーラーの交響曲第5番4楽章の「アダージェット」をバックグラウンドにとても美しい印象深い作品である。今回観たのはベンジャミン・ブリテンによって1973年に作られたオペラ。マックビカーの演出は映画を彷彿させるシーンが多くあったが、スクリーンという媒体から舞台へと見事に作り出されていた。またよりイギリス的な印象が残るものであった。オペラでのタジオ役はダンサー、老作曲家アッシェンバッハはテノールのMark Padmore。このタジオに魅せられる老いていく老作曲家を素晴らしく歌っていた。またタジオを踊ったLeo Dixonというダンサーもみなぎる若さと美しさそしてその若さゆえの繊細さを見事に表現していた。ブリテンらしい曲と、評判通りの素晴らしい舞台であった。

7 December 2019

The Cave / ザ・ケイブ

by Feras Fayad 2019 Denmark, Syria

シリアの民間活動を行うホワイト・ヘルメットを追ったドキュメンタリー「アレッポ 最後の男たち」の監督フェラス・ファヤードの最新作。シリアのグータにある地下病院の責任者であり若い女性医師のアマニとそのスタッフを2016年から2018年の間追ったドキュメンタリー。グータの街は破壊尽くされているがそれでもまだロシアの爆撃機の攻撃を受け続け人々は地下に要塞を作り生き延びている。そこにある7つの病院の一つは女性医師によって運営されている。毎日大量の死傷者が運ばれまた上空からロシア爆撃機が飛行する爆音が響く。そして次第に病院もその爆撃の標的となり始める。

オープニングのシーンで、山脈を背景にしたグータの街のスカイラインが大画面に映し出される。そして爆撃機の爆音と共に次から次へと街に爆弾が落とされる。また廃墟と化した街中、病院内で爆音に怯えるスタッフたちの姿が映し出される。まるで第二次世界大戦のフィクション映画でみるセットのようだが恐ろしいことにこれは現実の世界の姿である。またあるシーンで女性スタッフが大量に運び込まれる患者をみて「誰も怪我をしていないのに皆死んでいく」と叫ぶ。そこには化学兵器で苦しむ人々の姿があり、そして病院のスタッフもマスクをしながら懸命に応急処置に当たる。あまりにも残酷だ。

この作品上映後の質疑で、ファヤード監督は内戦シリアの状態だけではなくシリア社会で置かれている女性の立場をフォーカスしたかったと述べていた。はじめ7つの病院で撮影を始めその途中でアマニ医師と出会い彼女にフォーカスすることを決めたという。内戦の状況下で現場で医師として活動をするだけでなく、そのシリアに置ける女性への偏見とも戦う女性スタッフ達、彼女達の試練は想像を絶するものである。全撮影フッテージは1000時間に及ぶという。編集段階でエディターがトラウマに陥りスタッフ全員はセラピーにかかりながら作業を進めたそうだ。監督は多くの人に見てもらうことにこの作品の意味があると言っていたがまさしくその通り。数日たった今でも様々なシーンが脳裏に鮮明に焼き付いてる。

1 December 2019

The Irishman / アイリッシュマン


by Martin Scorsese 2019 USA

マーティン・スコセッシの最新作「アイリッシュマン」、ロバート・デ・ニーロ、アル・パチーノ、ジョー・ペシ、ハーヴェイ・カイテルと往年の俳優陣が揃った豪華キャスト。もちろん話はギャングスター。アメリカ50〜70年代米トラック組合チームスターの一員 でありマフィア、ブッファリーノ・ファミリーのヒットマンであった年老いたフランク・シーランによる、当時チームスターのヘッドであったジミー・ホッファ暗殺の告白・回想劇である。CGを駆使して登場人物達の若かりし日の姿をクリエイトしていたが、違和感はないがどうもイマイチ信憑性に欠く。多くの批評ではスコセッシの最高傑作とまで言われているが、話はいつものスコセッシ節で、「グッドフェローズ」と重な理、冒頭シーンもステディーカムの長回しと、どうも今までの彼の総集編という感が拭えないかった。

Seymour Hershの著書「The Dark Side of Camelot」ではJFKの父親ジョセフ・ケネディーは シカゴマフィアのコネクションを利用してイリノイ州の選挙を手回しし息子を勝たせたが、JFKがマフィアの検挙に着手した為彼らの逆鱗に触れJFKそしてロバート・ケネディー共々暗殺されたという説が書かれている。「アイリッシュマン」もこの説がベースとなっており、そのコネクションの成り行きがみれたようで興味深い内容であった。いずれにせよ、3時間半と長い作品であったが往年の俳優陣、そして歴史ミステリーとで楽しめた作品であった。

17 November 2019

Parasite / パラサイト 半地下の家族

by Bong Joon-ho 2019 Korea

2019年カンヌのパルムドール受賞作品、韓国のボン・ジュノ監督の「パラサイト 半地下の家族」、本国韓国では大ヒット、またフランスでもヒットしているそうだ。韓国映画には斬新なアイディアものが多くまたその質も高い。この「パラサイト」では格差社会を深裂に批判しながらも奇想天外な話の展開とコメディータッチな演出でその世界観にグイグイと引き込み、まるで話はシェークスピアのよう。労働者階級地区の半地下アパートにすむ一家、キテクそして妻のチョンソク、この二人の息子ギウと娘のギジョン。全員失業中で細々と暮らしているが皆頭脳明晰。たまたま息子のギウが裕福な社長一家の娘の家庭教師となったことから、キテク一家は抜群の頭脳を用いてこの裕福一家を欺いていくことから次々と話が展開する。映像も濃く描かれドロドロとした格差社会を象徴しているが、この作品には教訓的な部分は全くない。キテクを演じたソン・ガンホが印象的。今年見た新作では一番の面白さであった。

10 October 2019

Cold Case Hammarskjold / コールド・ケース・ハマーショルド

by Mads Brugger 2019 Sweden

ドキュメンタリー映画好きで数多く見ているが、この作品はクリエイティブに作られ楽しめる一方あまりにも衝撃的な内容と、素晴らし出来であった。ハマーショルドは第二代国連総長で1961年9月にアフリカのローデシア、現在のザンビア上空で飛行機事故により亡くなった。出身国スェーデンでは暗殺陰謀説が根強く、スウェーデン人独立調査官のGöran Björkdahlとデンマーク人ジャーナリストMads Brüggerの2人はこのミステリーを7年かけて調査。ハマーショルドの乗った飛行機はベルギー人パイロットによって撃墜された証拠を見つけ、そしてSouth African Institute for Maritime Research (SAIMR)、南アフリカの準軍事組織へと辿り着く。当時アフリカでは多くの国が脱植民地運動を経て独立したが、豊かな資源の利益をキープしたい元支配国の企業、冷戦、そしてアパルトヘイトと各国の思惑が渦巻き、アフリカ大陸の白人至上主義を遂行する事を目的としてSAIMRが密かに作られた。この組織によって、アフリカの独立した国々をサポートするハマーショルドは邪魔な存在であるが為に暗殺され、各国のクーデターに関与し、またアパルトヘイト後年期アフリカ大陸で白人をマジョリティーとする為にHIVウイルスを混ぜたワクチンをアフリカの多くの国々で無料接種行った事実が元SAIMR諜報員の証言によって明らかにされた。
上映後プロデューサーとの質疑で、この元SAIMR諜報員の妻は黒人で子供もおり長年このギャップに身を引き裂かれる思いから取材に応じ、またこの取材後に南アフリカから亡命したという。丁度昨日UN調査機関でこの墜落事故の調査を再開するという報告書が出され、この元SAIMR諜報員も協力しているという。
このようなショッキングな内容ながらも、前半調査を行っている過程は当時を再現したように、サファリスーツとハンティング帽を被って墜落現場を金属探知機とショベルを使って証拠をほり出そうとしたり、当時ハマーショルドが泊まっていたコンゴのホテルで白いサファリスーツの上下を着ながら監督のMadsは取材経緯を黒人女性の秘書2人に調査の工程をタイプさせたりと前半は笑える要素が多い。そして作品が進むにつれ内容は重くシリアスになっていくというかなり面白いドキュメンタリーであった。今年のサンダンスでドキュメンタリー賞を受賞している。

8 October 2019

Agrippina / アグリッピナ

@ Royal Opera House
作曲 : George Frideric Handel
指揮 : Maxim Emelyanychev
演出 : Barrie Kosky

ヘンデルのオペラ「アグリッピナ」、 Barrie Kosky演出の新プロダクション。Barrie Koskyといえば2017年のプロダクション「カルメン」は全く受け付けなかったが、今回の「アグリッピナ」はお笑いドタバタだが美しく仕上がっておりかなり面白い舞台であった。舞台セットは現代的で無機質な2階建ヤグラが組んであり、それが回転、見開きするというシンプルなものだったが、これが素晴らしい出来。
カウンターテナーでNeroneを歌ったFranco FagioliとOttoneを歌ったIestyn Daviesの2人は文句なし。Agrippinaを歌ったJoyce Didonatoの演技力はなかなか。
指揮はスコットランド室内管弦楽団の首席指揮者Maxim Emelynchev、若干31歳。髪の毛を振り乱して全力で棒を降っていた。全てがポジティブで一体となったいい舞台であった。