17 April 2018

Les Liaisons Dangereuses / 危険な関係

by Roger Vadim 1959 France

ジャンヌ・モローといえば悪女、彼女以上にこの役柄がしっくり来る女優は後にも先にもいない。特別美人でもなくスタイル抜群というわけではないがどうも彼女には何か裏があるような表面的ではない何かが感じられる。この作品でジャンヌ・モローと美男子俳優ジェラール・フィリップはお互い束縛しない自由奔放なヴァルモン夫妻を演じている。監督は多くの美人女優と浮名を流したプレーボーイでも有名なロジェ・ヴァディム。

外交官のヴァルモン(ジェラール・フィリップ)と妻ジュリエット(ジャンヌ・モロー)はパリ社交界の花形。この2人の関係はオープンでお互い恋人を作ってそのお互いの情事を聞き楽しみながらも2人は愛し合っていた。スイスのスキー場で知り合ったマリアンヌ(アネット・ヴァディム)にヴァルモンが純粋に惹かれていく事からこの2人の歯車が狂い始める。

ジャンヌ・モロー演じる高慢ちきなジュリエット、そしてプレーボーイを演じるジェラール・フィリップとスクリーンにはこのカップルの強烈で濃い映像が映し出される。そして演出はロジェ・ヴァディムと全て役者が揃った作品だ。アネット・ヴァディムはこの映画の撮影中、ちょうどブリジッド・バルドーと別れたロジェ・ヴァディムと恋に落ち結婚したそうだ。まるでこの作品を体現しているかのようなロジェ・ヴァディムはアネット・ヴァディムの清楚な美しさに惹かれたのだろうか。

15 April 2018

120 BPM / 120 ビート・パー・ミニッツ

by Robin Campillo 2017 France

120 BPMとは1分間120の心拍数、この状態になると冷や汗、体の硬直、頭が機能しなくなり、不安になりと人の体は狂い出す。この映画120 BPMは90年代フランスでエイズ啓蒙活動を行ったAct Upが主題となっている。

エイズの偏見に対して抗議活動を行うAct Up早期メンバーのショーン(ナウエル・ぺレーズ・ビスカヤート)、16歳の時に初めて関係を持ったボーイフレンドからエイズに感染。通常のロビー活動では埒が明かないと血糊を使って製薬会社のオフィスに押し入ったりとショックで注目される方法での活動を推し進めるが要塞は硬い。次第に自身の病状に危機を感じフラストレーションがたまるショーンだがAct Upに参加したばかりのHIVに感染していないゲイのナタン(アーノード・バロワ)と惹かれ合い恋人の関係になる。しかしながらショーンの健康状態は日増しに低下して行く。


当時エイズ患者そしてゲイコミュニティーは差別され、また行政や製薬会社のエイズへの対応遅れの為、多くの者が命を落とした。その多くはゲイの若者達。彼らの限られた時間の中で必死に行政そして製薬会社に訴え、社会に正しい知識を広めようと活動を広げる。その彼らのなんとしてでも生きようとする姿はタイトル通り葛藤でありまた悲しいながらも美しい。当時私はNYに住んでいたが、ここも勿論例外ではなかった。街中至る所でAct Upの活動を目撃し、輸血からエイズに感染した子供の学校登校ボイコットした学校のニュースがTVで流れ、またエイズと共に生き偏見を無くそうと活動している小学校に通う少年にも会う機会が会った。その少年の祖母が「来年のクリスマスも孫と一緒に過ごせるのかどうか分からない」と涙していた事が今でも忘れられない。この120BPMはその当時の社会を映し出した感動的な作品である。監督のロバン・カンピオも当時Act Upに参加していたという、この経験がここまで追求できた素晴らしい作品を作る事が出来たのだろう。昨年度カンヌでグランプリを受賞している。

10 April 2018

Macbeth / マクベス

@ Royal Opera House

作曲 : Giuseppe Verdi
指揮 : Antonio Pappano
演出 : Phyllida Lloyd

マクベス夫人がアンナ・ネトレプコで期待していた「マクベス」、予想通りに素晴らしい舞台となった。ネトレプコはこういう狂気に満ちた役を歌わせると迫力があってなんともいい。またマグダフのユシフ・エイヴァゾフもなかなか。この2人は実生活では夫婦。さっさと殺されてしまったバンコーのダルカンジェロは見た目もよしで歌もよし。多くの評論が述べている様にマクベスのジェリコ・ルチッチの信憑性が多少低いかなと思ったが、パッパーノの指揮と久々に見た正統派の舞台にとても満足度が高いものであった。

9 April 2018

Call me by your name / 君の名前で僕を呼んで

by Luca Guadagnino 2018 USA, Italy

多感な思春期の少年を演じたティモシー・シャラメ、今年度の多くの賞レースで最優秀男優賞にノミネートされていた。BAFTAや米アカデミー賞の会場で受賞アナウンスを待つTV画面に映し出された22歳の彼の姿はとても初々しく印象的で、またポスターとトレーラーから彼ににうってつけの作品だと推測していた。予感通りティモシー・シャラメはすんなりとこの作品の世界観にはまっていたが、辛口にこの作品自体を言わせてもらうとある意味なんとも期待外れなものであった。

80年台前半、アメリカ人17歳のエリオ(ティモシー・シャラメ)は家族と共に毎夏北イタリアの別荘で過ごしている。別荘に招待されたアメリカの大学で教鞭をとる父の生徒オリヴァー(アーミー・ハマー)との一夏の情事を通しエリオは多感な青春期を経験する。

夏と思春期、この2つの結びつきは永遠のテーマ。何が期待外れであったかというと、この手の作品は今までいくらでもあり、この作品が他と違うのは同性愛ということだけ。そしてアメリカ人が好むイタリア田舎の風情がふんだんに映し出され、美術、音楽、芸術が多く挿入されているがどうもマンネリ感が漂い、また特に演出家の個性も感じられずと退屈なものになってしまった、残念。



6 April 2018

Una mujer fantástica / A Fantastic Woman / ナチュラル・ウーマン

by Sebastian Lelio 2017 Chile


今年度アカデミー賞外国語映画賞受賞作品、チリの「ナチュラル・ウーマン」。突然の恋人の死、そしてまたトランスジェンダーであるが故、主人公のマリーナが通過しなくてはならない人生の一ページを描いた。この彼女の心情がスクリーンに映像化され、なんともオリジナリティーのある昇華したものであった。

妻と別れ子供もいる初老オルランドと長年同性しているトランスジェンダーの歌姫マリーナ、お互い純粋に愛し合っていたがオルランドは発作で突然死んでしまう。オルランドの遺族から差別され嫌がらせを受けるマリーナ、葬式に出席する事も拒まれる。

このマリーナを演じたダニエラ・ベガ、彼女自身もトランスジェンダー、またオペラ歌手で役者という多才な女性でありとても印象に残る女優である。監督のセバスチャン・レリオはマリーナを受け身で複雑なバックグランドを持ちながらも強い意志の一人の女性として描いた。またゲイクラブなど耽美な世界も映し出すことでマリーナがトランスジェンダーという特殊な側面を彼女の個性として描かれていた。

一言でこの映画を言い表せば、とても純粋な女性の内面を描いた作品であった。

11 March 2018

I, Tanya / アイ、トーニャ、史上最大のスキャンダル

by Craig Gillespie 2018 USA

1994年、どのTVチャンネルをつけてもスケーターのナンシー・キリガンが「Why? Why?」と襲われた直後に泣き叫ぶ姿を撮ったシーンばかりが流れていた。それから間も無くして同じくスケーターのトーニャ ・ハーディングが事件に関わっていると取り沙汰され大きなスキャンダルとなっていた。当時あまりのも報道の過熱ぶりに否応無しに情報の洪水に巻き込まれ、その事件性以上にトーニャ ・ハーディングのトラッシュぶりに興味を持った事を覚えている。この映画「アイ、トーニャ 」はその事件の渦中のスケーター、トーニャ ・ハーディングのバイオグラフィーである。

トーニャ ・ハーディングの母を演じたアリソン・ジャニーは今シーズンの賞レースで助演女優賞を総ナメしている。またターニャを演じたマーゴット・ロビーも各賞で主演女優賞でノミネートされていた。これら女優陣達を見ているのはなかなか楽しかったがどうも映画自体はイマイチでTVドラマの域から出ていない感あった。

それにしてもハーディングは労働者階級出身ながらお金のかかるスケートの世界で頭角を表し世界選手権で1位やオリンピックで4位とすごい実力で強靭な精神力を持つ女性だと思うが、虐待やDVの被害者のチェーンから抜け出す事の難しさ、その呪縛からは逃れる事ができなかったようだ。

6 March 2018

Dilwale Dulhania Le Jayenge / シャー・ルク・カーンのDDLJラブゲット大作戦

by Aditya Chopra 1995 India

インドのフィルム史で最も成功した映画の一つとして挙げられる「シャー・ルク・カーンのDDLJラブゲット大作戦」、知り合いのインド人からのオススメインド映画であった。

インドの規律を重んじる厳格な父親の下、ロンドンで育ったインド人移民の娘シムラン(カージョール)、父親はインドの出身の村の友人の息子をシムランの婿と決めてしまう。父親に背けないシムラン、結婚前に一度ヨーロッパを旅したいと父親に許しを請う。友達と共に旅立ったヨーロッパ大陸、道中知り合った同じくロンドンで育ったインド移民2世で自由奔放なラージ(シャー・ルク・カーン)と恋に落ちる。ラージはシムランの家族を尊重しながらも望まぬ結婚を強制されるシムランを救い出そうとするが。。。

恋、仇、コメディー、モラル、歌あり踊りありと、これぞ「ザ・インド映画」と言える濃い内容。20年たった今でも劇場で上映されてロングランを記録しており、また国内外で大ヒットしたそうだ。インド大衆映画特有の大げさな演技や演出があまり得意でない私でも、これを一つのジャンルとして見てしまえばさほど違和感なくすんなりと見る事ができた。確かに面白い作品だったが一度見れば十分なものであった

3 March 2018

The Shape of Water / シェイプ・オブ・ウォーター

by Guillermo del Toro 2018 USA

独特な世界観を持つギレルモ・デル・トロ監督の新作「シェイプ・オブ・ウォーター」、発話障害の女性と魚人の恋愛と聞いて?と思ったが、オリジナリティーがあり、なかなかユニークな発想で今シーズン観た映画の中ではダントツに面白いものであった。

1960年代初期、政府の研究所で清掃婦として働くイライザ(サリー・ホーキンス)は発話障害で孤独な生活を送る。彼女の唯一の友は隣に住むゲイのジェイルス(リチャード・ジェイキンス)と清掃婦の同僚ゼルダ(オクタビア・スペンサー)。イライザとゼルダは研究所のラボでアマゾンで捕まえられた魚人を見つける。イライザはこの虐げられた魚人に興味を持ち交流を深め恋に落ちる。一方研究所のストリックランド大佐(マイケル・シャノン)は上層部から魚人を宇宙飛行打ち上げに搭乗させる事を命令される。魚人をこのミッションから救う為計画を練るイライザ、ソ連のスパイで研究員として潜在していたホフステトラー博士(マイケル・スタールバーグ)の協力を得て計画を遂行するが。。。

サリー・ホーキンスがとてもいい演技をしており、魚人と恋に落ちるイライザを違和感なく納得の行くキャラクターを作り出していた。またその他の役者も皆真実味のあるもので、奇想天外な話ながらも一つの世界を作り出していた。プロダクション・デザインも50年代をモチーフにしているがオリジナルなものが多くこれまた素敵な世界。役者、プロダクション・デザイン、音楽、演出などすべてがハーモニーをなして成功している作品であった。

10 February 2018

Carmen / カルメン


@ Royal Opera House
作曲: Georges Bizet
指揮: Jakob Hrusa
演出: Barrie Kosky

ニュープロダクションの「カルメン」、今までとは全く違う、お芝居の様なミュージカルの様な典型的な演出のカルメンとは全く違ったものであった。セビリアのという感じは全くなしでどちらかというとAll that Jazz的。写真の真ん中の女性がカルメン。セットは1つのみ、シーン毎には場内アナウンスで情景が述べられ、挙げ句の果てには所々カルメンの心情も説明される有様。踊りの場面が全体を通して多くあり、歌って踊れる歌手でないとこの舞台では難しいと感じさせる。最後ドンホセに殺されたカルメンが音楽が終わった直後にすくっと起きて「人生ってこんなものなのね」という感じで戯ける演出は意表をついたものであった。好きか嫌いかは別として全く退屈なしで面白おかしく楽しめた舞台であった。カルメン役のAnna Goryachovaは歌も踊りもとてもよかった。ドンホセのFrancesco Meliは初めはただ怒鳴っているとしか思えず失望していたが中盤から調子が出てきたのか聴きやすさは抜群によくなっていた。

25 January 2018

Mudbound / マッドバウンド 哀しき友情

by Dee Rees 2017 USA

今年度アカデミー賞で脚本賞、助演女優賞、撮影賞、主題歌賞でノミネートされている「マッドバウンド 哀しき友情」、ある意味現在の社会の流れを象徴しているかのような作品である。監督そして脚本は黒人女性でレズビアンを公言しているディー・リース、助演女優と主題歌は黒人シンガーのメアリーJブライジ、そして撮影監督賞初の女性ノミニーであるレイチェル・モリソン。配給はネットフレックス。40〜50年代ジム・クロウ制度が平然と存在するアメリカ南部ミシシッピーが舞台である。

ミシシッピー田舎にあるコットン農場、照りつける太陽、そして容赦無く降る雨と、大地はいつも泥だらけで環境は厳しい。大家の白人家族ヘンリー(ジェイソン・クラーク)と妻ローラ(キャリー・ミリガン)そしてヘンリーの父で人種差別主義のパピー(ジョナサン・バンクス)、ヘンリーの弟でパイロットとして第二次世界大戦で戦っていたジェイミー(ギャレット・ヘドランド)、一方ヘンリーの農場で働く黒人一家の長ハプ(ロブ・モーガン)と妻フローレンス(メアリーJブライジ)そして息子で戦車隊の隊長を勤めたロンゼル(ジェイソン・ミッチェル)、この2つの家族の関係が描かれている。

厳しい環境そして人種差別で過酷で虐げられた黒人一家の生活がしみじみと伝わってくる。また運命に逆らえない惨めな人生を営む白人一家も描かれている。それにしても人種差別が公然と約50年前まで行われていたとはヘドがでる思いだ。第一次、二次世界大戦中アメリカ軍には第92歩兵師団があり黒人はこの団に所属していた。また第二次世界大戦ではTuskegee Airmen、タスキーギエアメンと呼ばれる黒人戦闘機部隊が活躍した。大戦から帰還し立ち寄った地元の食料品店の表玄関から出ようとしたロンゼルを阻んだパピーと白人男性仲間が「お前は軍で白人と同じように戦ったらしいがここはミシシッピーだ、裏口から出ろ」と言ったこの一言がこの不条理を言い表していた。ひどい話だ。

エアリーJブライジが演じた、厳しい環境生活の中でもずっしりと見守る母フローレンスが印象的だった。

24 January 2018

Salome / サロメ

@ Royal Opera House
作曲 : Richard Strauss
指揮 : Henrik Nanasi
演出 : David McVicar


オスカー・ワイルドの戯曲が元となっているシュトラウスの「サロメ」。このプロダクションは2008年マックビカー演出の再演であり10年前のものだが色褪せず十分な見応えである。7つのベールの踊りでは、義父エロドの長年に渡るサロメの葛藤をクロノロジカルに見せサロメの苦悩が現れている。とにかく血みどろの舞台で、終わった後の挨拶ではヨカナーンを歌ったミヒャエル・ボォッレとサロメのマリン・ビストレムが床に溜まった血溜まりを避けて何度も挨拶している姿は観衆からクスクス笑いを誘っていた。
サロメは1世紀頃古代パレスティナに実在していたとされる。ヨカナーンの生首に口づけするサロメは耽美の象徴とされ彼女を題材にした絵画、小説は数多くある。オペラでは演出家によって、狂った女、虐げられた女性、自己を突き通す女性と解釈は色々とあるが、このマックビガーの舞台ではどちらかというと虐げられてきた女性という印象を与えるが、それ以上に自己顕示欲が異常に強い女性、ファムファタールが具現化されている。


20 January 2018

Three Billboards Outside Ebbing, Missouri / スリー・ビルボード

by Martin McDonagh 2017 USA

番宣を見て以来今期一番楽しみにしていた「スリー・ビルボード」、想像していた以上にシリアスな内容だったがブラックユーモアも多く含みやはり期待通りのものであった。

ミズーリ州のド田舎エビングに住むミルドレッド(フランシス・マクドーマンド)、7か月前に娘をレイプ殺害され未だに犯人が捕まっていない事に怒り悲しんでいる。ある日ミルドレッドは路上沿いにある廃れた3つの広告看板に気づく。捜査が進まない怒りを、警察署長であるウィロビー保安官(ウディ・ハレルソン)を名指しにした告訴をこの広告看板に上げた事によりエビングの住民の間で亀裂が起きる。

この作品のテーマは怒りが怒りを呼ぶという、怒りの連鎖。監督のマーティン・マクドナーは意識していたのかどうか分からないが、いかにも現在の社会状況、特にアメリカ社会を象徴しているかのような内容である。エビングはまるでトランプ・ランドを見ているようだ。断ち切れないこの怒りの連鎖、このまま自滅して行くのか?断ち切ることが出来るのか?この作品のキャラクターを通して物語が語られる。

フランシス・マクドーマンド、ウディ・ハレルソン、差別主義でレッドネックのジェイソンを演じたサム・ロックウェルが好演。特にフランシス・マクドーマンドが演じた母ミルドレッド、彼女にから発せられる言葉には悲しみとほとばしる怒りの激しさが強く感じられるが、これが皮肉なユーモアと融合され不思議な親近感を彼女に覚える。監督のマーティン・マクドナーは初めて知った監督、調べてみると舞台で活躍していた英国人出会った。

29 December 2017

Happy End / ハッピー・エンド

by Michael Haneke 2017 France, Austria

ミヒャエル・ハネケの新作「ハッピー・エンド」、フランスのカレーに住むブルジョワ階級3世代に渡るローラン一家を描いている。勿論サイコパスを描くと最高のミヒャエル・ハネケの作品なので、このローラン一家のそれぞれのメンバーも人には言えない秘密を抱えている。

一家の家長である80歳の認知症を患い始めたジョルジュ、ジョルジュから建築会社を継いだ娘のアン、アンの息子で建設会社で監督業をするピエール、アンの兄弟で医者のトーマス、トーマスと前妻の間の娘ティーンのイブ、ローラン家の住み込み手伝いモロッコ人の夫婦、トーマスの妻と生まれたばかりの子供、カレーに住む移民と多くの人物像が描かれているが、真核は壊れた家族の群像劇でありまた皮肉で冷たいコメディー要素も含んでいる。この普遍的な人間が抱える闇の部分が、現代のコミュニケーションのツールであるメールやSNSやビデオチャットが画面全体に映し出される事により現代の社会病がより際立っている。

アンはイザベル・ユペール、ミヒャエル・ハネケの作品でこの手の役柄はさすが文句なし。作品全体としてはクライマックスを除いてはやや退屈気味であったが、まあ日常に潜む病という事では監督の意図が十分に理解できる、とはいいつつ長いと感じた作品であった。