9 October 2018

Enter the Dragon / 燃えよドラゴン

by Robert Clouse 1973 Hong Kong, USA

カンフー映画の金字塔、ブルース・リー主演「燃えよドラゴン」、たまたま夜中TVで放送していたので見たが、いや〜流石に今でも十分に面白い。カンフー・エンターテイメントの骨頂!体一つでカンフーを一つのアクション映画ジャンルに作り上げたブルース・リーの格闘技の凄さ以上に彼の持つストイックさもなんともいえない。

この「燃えよドラゴン」はブルース・リーの初めてのハリウッド共作であるため、監督はアメリカ人のロバート・クローズ。当時ヒットを飛ばしていた007 ジェームス・ボンドを意識してか共演しているジョン・サクソンはどことなくショーン・コネリーを連想させる。また猫を抱いた犯罪組織の長ミスター・ハン(シー・キエン)も「ロシアより愛をこめて」や「サンダーボール作戦」などに登場する犯罪組織の首領ブロフェルドそのもの。Kang Fu meets 007という感じであろうか。とはいえカンフーアクションとしての土台がしっかりとしているので一つの作品として確立している。

最近のアクション映画はCG抜きではありえない。この時代のアクション映画は俳優自身やスタントが全てアクションを行なっていた。やはり実写の凄さ、迫力点において現在のアクション映画とは比べ物にならない面白さだ。

4 October 2018

Gotterdammerung / 神々の黄昏

@ Royal Opera House
作曲 : Richard Wagner
指揮 : Antonio Pappano
演出 : Keith Warner

第三夜でシリーズ最後の「神々の黄昏」、壮麗なメロディーで一番好きな部である。ジークフリードがラインに旅立つ前にブリュヒンデに指輪渡すシーンが聴きどころなのだが、この二人が指輪を投げ合うという演出で、あ〜指輪落としそうと気が散ってしまい音楽に没頭することが出来なかったのが残念。ブリュヒンデのニナ・シュテメは文句なし。あとハーゲンを歌ったシュテファン・ミリングが圧倒的な迫力。引き続きオーケストラはホーンでヒット&ミス。結構辛口な批評を受けたこの「ニーベルングの指輪」、クラシックな演出とは違い様々な要素を混ぜいいのか悪いのかは別としてエンターテイメント的にはとても楽しめたものであった。

1 October 2018

Siegfried / ジークフリート

@ Royal Opera House
作曲 : Richard Wagner
指揮 : Antonio Pappano
演出 : Keith Warner

第二夜の「ジークフリート」、今まで見てきた「ジークフリート」のプロダクションの中で一番楽しめたものであった。通常重くシリアスな演出だがこのキース・ウォーナーの舞台は笑いのツボ満載で、クライマックスのジークフリートとブリュヒンデが愛の歓喜に身を任せるシーンですら笑える要素が組み込まれていた。これは好き嫌いが別れるだろう。オーケストラは引き続きヒット&ミス。歌手陣では、またまたブリュヒンデのニナ・シュテメが素晴らしい歌いっぷり、又ジークフリートのシュテファン・フィンケは初めて聞いたのだが、恐れを知らない単純なジークフリートから愛を知り初めて自分自身の恐れに直面する姿をダイナミックにかつ繊細に歌い上げていた。ミーメのゲルハルト・シーゲルは安定のよさ。いよいよ残るのは「神々の黄昏」のみ、楽しみである。

28 September 2018

Die Walkure / ワルキューレ

@ Royal Opera House
作曲 :  Richard Wagner
指揮 : Antonio Pappano
演出 : Keith Warner

ニーベルングの指環第一夜「ワルキューレ」、コッポラの「地獄の目次録」では、「ワルキューレの騎行」の戦慄に乗ってズシリと重たい要塞のようなアメリカ軍ヘリコプターの部隊がベトナムを爆撃して行くシーンは映画史の中で語り継がれている。オペラに話を戻すと、序夜「ラインの黄金」から一転してそのスケールにあった重厚なものであった。一方オーケストラのチューンが多少乱れ、管楽器がずれている時もあり演奏は完璧とは言えルものではなかった。歌手陣に関しては、ブリュンヒルデのニーナ・シュテメはさすがの完璧度。フンディンクのアイン・アンガーも印象に残るものがあり、ジークムントのスチュアート・スケルトンも良く、ヴォータンのジョン・ラングレンも苦悩する神が板についてきたようだ。席が舞台に近い事もあり歌手の演技や表情も良く見え、やはりニーナ・シュテメは群を抜くものがあった。残り2夜の彼女が楽しみである。

26 September 2018

Das Rheingold / ラインの黄金

@ Royal Opera House
作曲 : Richard Wagner
指揮 : Antonio Pappano
演出 : Keith Warner

キース・ウォーナー演出2005年版「ニーベルングの指輪」の再公演。序夜の「ラインの黄金」、この後3夜に渡る指輪を巡る神々と人間の壮大なドラマのイントロダクション的オペラ。「ニーベルングの指輪」そしてワーグナーというと、あまりにも重たい内容、重厚な音楽、そして長時間という極め付けな真剣そのものなオペラ作品であるが、キース・ウォーナーの演出はそれを逆手に多少ディフォルメありのコミカルなものに仕上がっている。所々好き嫌いがあると思うが全体としてはこの「ラインの黄金」まあ私好みの舞台である。多少残念なのは、初日という事もあるのか歌手陣の勢いがあまり感じられなかった事である。壮大なスケールの中で歌うには歌手陣にもそれなりのスケールが要される。これからヴォータンのジョン・ラングレンがどう勢いを増して行くのかが楽しみだ。

17 September 2018

Zimna Wojna / Cold War / コールド・ウォー

by Pawel Pawlikowski 2018 Poland

2018年カンヌで最優秀監督賞受賞作品「Cold War」、冷戦時代のポーランドで冷戦という時代に翻弄される恋人達を追った作品。前回の「イーダ」と同じくパブリコウスキー監督の演出はモノクロで静かに進行していくが、なかなかインパクトの強い内容である。

民族音楽団のシンガーダンサーに選ばれたズラ(ヨアンナ・クーリグ)、楽団のディレクターであるヴィクター(ボリス・シッチ)と恋愛関係になるが、時は冷戦時のポーランド。自由を求めて渡航公演中に亡命するヴィクター、一方故郷を離れる事ができないズラだが渡航公演のたびに逢瀬を重ねお互い身を滅ぼしていく。

音楽と映像で見せるこの作品、大人好みな風合いである。確かに劇場にいた観客の多くは高齢者が圧倒的。モノクロで撮られたパリとポーランドがとてもクラシックでノスタルジック。50年代のパリの音楽シーンはとても魅力的だが、一番印象に残ったのは民族楽団の団員が歌うポーランドの民謡。意味は分からないが「オヨヨ〜〜オヨヨ〜〜」と歌うシーンがなかなか迫力である。とはいえ「愛の嵐」でシャーロット・ランプリングがナチのユニフォームをきて歌うシーンのような虚無感が全体を包んでいた。

2 September 2018

Black KKlansman / ブラッククランズマン

by Spike Lee 2018 USA

長い間いまいちパッとしなかったスパイク・リー、久々にこれぞという作品が登場。「ブラッククランズマン」、70年代後半アメリカ、コロラドスプリングスで初の黒人警官となったロン・ストールワース(ジョン・デビッド)、電話で白人人種差別主義者になりすましクー・クラックス・クランにコンタクト、同僚のユダヤ人刑事ジマーマン刑事(アダム・ドライバー)と協力しながらKKKの陰謀を捜査するという突拍子もない内容であるが全体的に上手くまとまりなかなか見応えのある作品であった。

スパイク・リーならではのポップでユニークな演出、また70年代ブラックスプロイテーションもどきながらも現代風刺も忘れていない。KKK のメンバー達が「America First !」と皆で叫ぶシーンはすぐさまにトランプの姿と結びつき、多くのシーンで現在のアメリカの社会を反映していた。久々の社会派作品、娯楽作品がありふれている中、映画という媒体の正義の姿を見ている気がした。と硬い事を言っているが、笑も多く含まれた内容であった。アメリカ社会に危機感を抱いている私なので、スパイク・リーにはこの様な作品を作ってくれてありがとうと言いたい。まあこの作品を見るひとは限られているだろうが。。。

17 July 2018

L'amore / アモーレ

by Roberto Rossellini 1948 Italy

「バラの刺青」に続いてアンナ・マニャーニ主演「アモーレ」、コクトー原作ロッセリーニとフェデリコ・フェリーニ脚本と豪華メンバーが揃っている。この作品2部から構成され、一話の「人間の声」では恋人からの電話を待ち感情に揺さぶられる女性をマニャーニが一人演技し、二話「奇跡」ではアマルフィ海岸フローレの素晴らしい自然造形を背景にマニャーニが聖ヨゼフと思い込んだ男に犯され妊娠する女性を演じている。この偽聖ヨゼフはフェデリコ・フェリーニが演じてる。映画冒頭で「アンナ・マニャーニの芸術性に捧げる映画」とメッセージが挿入されているように、全編ほぼ彼女の一人芝居である。このアンナ・マニャーニは不思議な女優で、時には絶世の美女に見えるが、大概は醜い。そして感情が体現されている。これが彼女の魅力で目が離せない理由かもしれない。

数年前フローレで一夏を過ごしたが、とにかくとんでもない坂道が崖に沿って作られ、その下は絶壁の海と神々しい世界が作り出されていた。こんな場所でロケなんて、相当過酷であっただろうと想像がつく。マニャーニとロッセリーニが暮らした崖下の入江で海水浴をして借別荘に戻るのに階段を使ったのだが、これがなんと1500段以上の階段。素晴らしい景観の場所には試練がつきものなのであった。

15 July 2018

The Rose Tattoo / 薔薇の刺青

by Daniel Mann 1955 US

イタリアの名女優アンナ・マニャーニ主演「薔薇の刺青」、彼女はこの作品でアカデミー主演女優賞を受賞している。昨日ストロンボリ島にいたので無性にアンナ・マニャーニの映画が見たくなりアマゾン・プライムでこの「薔薇の刺青」を見た次第だ。ストロンボリといえばロッセリーニ監督イングリッド・バーグマン主演「ストロンボリ」が有名だが、これは元々はアンナ・マニャーニ用に書かれた脚本だったがロッセリーニがバーグマンと恋に落ちたためバーグマンが主演となった。個人的にイングリッド・バーグマン嫌いでアンナ・マニャーニ大好きなので「ストロンボリ」は見る気がせず、同じくストロンボリで撮影されたアンナ・マニャーニ主演の「噴火山の女」を探したがネットではなかったので「薔薇の刺青」となった次第だ。この作品は初めて見たのだがアンナ・マニャーニの存在感が凄い。それに引け劣らず共演のバート・ランカスターも見応えあり。テネシー・ウィリアムズがマニャーニの為に書き下ろしただけあり内容も演劇的要素が上手く反映されたコメディー。これをこの2人の名優がいい感じで演じている。この作品を今まで見逃していたとは!!

マニャーニと言えば、南イタリアのアマルフィとポジターノの間にフローレという村に「アモーレ」製作中に彼女がロッセリーニと暮らした家がある。とても小さな入江にあるなんとも素朴な漁村の中にあるのだが、それはそれは趣のあるものである。私の中で印象に残る場所の一つである。

29 June 2018

Lohengrin / ローエングリン

@ Royal Opera House
作曲 : Richard Wagner
指揮 : Andris Nelsons
演出 : David Alden


41年ぶりローヤル・オペラの新プロダクション「ローエングリン」、評判通り、期待を裏切らない素晴らしい舞台であった。デビッド・アルデンの演出は伝統的なものとはかけ離れ、舞台は1930~40年代と思わせるヨーロッパ全体主義の社会背景なのだが、どうもワーグナーなのでナチスと重なるものがあり多少ひいてしまった感もあったが、予想外にも観客から笑いを取るシーン!もあり完成度の高いものであった。

クラウス・フォークトの透き通ったトーンの歌声は高貴で、そして端正な容姿はローエングリンにうってつけ。またクレイジーな女性オルトルートを歌ったクリスティーネ・ゲルケは演技、歌のパワーといい迫力満点。ネルソンの指揮を間近で見ることができたが、優雅にかつ重く指揮棒を振る姿は印象的。今シーズン飛び抜けて一番のオペラであった。

21 June 2018

La Boheme

作曲 : Giacomo Puccini
演出 : Richard Jones
指揮 : Nicola Luisotti

昨年の新プロダクション、リチャード・ジョーンズ演出のラ・ボエム。批評は2つに別れていたが、今まで見てきたトラディショナルな演出とは違った印象で主役の可憐で死んでいくミミよりも逆キャラクターで自由奔放な女性ムゼッタが大きくフィーチャーされている印象であった。

地味なキャストであった中でムゼッタを歌ったDanielle de Nieseが出てきた瞬間、その存在感と演技力で他を食らった状態であった。この為ミミを歌ったMaria Agrestaが薄れてしまった。ロドルフォのMatthew Polenzaniもどうも私的にはイマイチ感あり。このプロダクションはDanielle de Nieseでもっているようであった。演出的には好意が持てるプロダクションなので是非別キャストで見てみたいものだ。とは言いつつ旋律の美しさに没頭していたのも確かである。ラ・ボエムで赤いドレスに身をまとったDanielle de Nieseの写真を掲載してしまおう。

13 May 2018

Le Redoutable / Godard mon Amour / グッバイ、ゴダール!

by Michel Hazanavicius 2017 France

1950年代、フランス・ヌーヴェルバーグの旗手であった映画監督ゴダールの「中国女」に主演し結婚したアンヌ・ヴィアゼムスキーの自伝が原作。「勝手にしやがれ」「気狂いピエロ」で成功し名を馳せたゴダール、「中国女」撮影後に一回り以上年下のアンヌ・ヴィアゼムスキーと結婚するが、68年フランスで起きた5月危機、学生運動にのめり込み、そしてゴダール自身もウルトラエゴ化としていく姿を追っている。

監督は2011年「アーティスト」で数多く受賞したミシェル・アザナヴィシウス。この作品の中には、ジャンプカットや赤や青の色、グラフィックなどゴダールの特徴的な演出も多く使われ、またアンヌを演じたステイシー・マーティンの瑞々しさが眩しく、60年代フランスのファッショナブルな姿と、スクリーンに映し出される映像は見ていて楽しい。だが残念な事にゴダールの姿が抉り出されておらず、エゴイストで口先だけの嫌なやつという印象しか与えられていなかった。ゴダールを演じたルイ・ガレル、コメディー的でいいんだがやはりゴダールなのでどこかもっと癖のある姿が見たかった。題材はとても魅力的なのだが、イマイチな作品で留まってしまった。

ちなみにLe Redoutableとは1791年トラファルガーの海戦でネルソン提督とバトルを繰り広げ翌日沈没した船である。その後11代目である原子力潜水艦ル・ルドゥタブルからこの映画のタイトルがきている。ル・ルドゥタブルとは戦慄という意味だそうだ。

7 May 2018

Le jeune Karl Marx / The Young Karl Marx / マルクス・エンゲルス

by Raoul Peck 2017 France, Germany

19〜20世紀のもっとも影響力のある著書と見なされる「資本論」、その著者カール・マルクスの伝記であるこの作品、クラスの違う貴族の娘イェニーと結婚、ドイツからパリに移り、そのパリで生涯のパートナーとなるエンゲルスと出会い、そして1847年にロンドンでエンゲルスと共に共産主義者同盟を創立するまでを描いている。

産業革命を経て生まれた労働者と蔓延る貧困という新しい社会の歪みに対してペンで挑むマルクスとエンゲルスの知識人、この2人の話を映画化するのは容易でない事は想像できる。しかしながらこの作品はウィーン体制崩壊となった1848年革命までの激動の社会とこの2人の若かりし日々にフォーカスして、とてもクレバーに書かれている。またマルクスを演じたアウグスト・ディールとエンゲルスを演じたシュテファン・コナルスケも人物像を魅力的に引き出していた。監督のラウル・ペックを調べてみるとハイチ出身、1996〜97年にハイチ教育省大臣を勤めていた。また今年のオスカーのドキュメンタリー映画賞にノミネートされていた「I'm not your Negro / 私はあなたのニグロではない」もラウル・ペック監督の作品であった。これは未見なので早速見たいものだ。