26 October 2007

Alexandra

Alexandra by Alexander Sokurov 2007 Russia

途中涙がほろりとおちそうになった素晴らしい作品だった。監督のソクーロフは現在活躍している映画監督の中では、ロシア独特というのかメジャー路線エンターテイメントの作りとはまったく違う感性を放っている。


老女アレキサンドラ(Galina Vishnevskaya)はチェチェンのロシア軍基地を訪れる。大尉として駐屯している孫のデニス(Vasily Shevtsov)に会いに来たのだ。軍人を運ぶ貨物車に乗り基地に夜中到着。テントにある部屋をあてがわれたアレキサンドラ、朝起きてデニスが隣のベッドで寝ている姿を見つけ再会を喜ぶ。なにもないサバナ地帯にあるロシア軍基地。デニスは基地を案内する。戦車が行き交うごとに砂埃が舞い、フロントラインから戻った兵士達は銃の手入れをしている。
デニスがパトロールに出かけた後、アレキサンドラは基地を徘徊する。そして基地の外にあるローカル市場まで出かけるが、途中気分が悪くなり、市場の老女がアレキサンドラを介護する。その老女の家で数時間過ごし、アレキサンドラはまた基地に戻る。翌日デニスは長期ミッションに出かけ、アレキサンドラはサントペテルブルクに戻って行く。

と話はこのアレキサンドラが基地で過ごした2日間。映像は貨物車、殺風景な基地、そしてなにもないサバナ、ローカルマーケット、老女の戦闘でぼろぼろになったアパートだけ。話はたんたんと進み、台詞もミニマムでストレート。とても静かですがこの年取った巨体の多少扱いにくい老女が基地をのそのそと亡霊かのようにうろつき、独り言のように話している彼女をみていると「この人はどんな事を経験してきたんだろう、どんな人生を歩んで来たんだろう」と感じます。なんていうのか、別世界から現世にやって来た神が現実を哀れみながらも己の運命も哀れんでいるというような。言っている事がとても抽象的ですが作品自体は現実そのものを描写しています。

この映像に乗って静かなクラシック調の音楽がながれるのですが、演奏はゲルギエフが担当していました。そういえば「エミルタージュ幻想」でもゲルギエフが出演してました。うーん、そうですねぇ、私はこのロシア系の監督達の作品はとても好きです。とはいいつつソクーロフ以外ではタルコフスキーですが。映像美と詩的要素の融合っていうのでしょうか、映画の魔法にかかっている気分です。

4 comments:

Anonymous said...

ソクーロフの最近の作品では、「太陽」を見ました。
戦争へ突入してゆく過程での昭和天皇の行動を理解していないと、
当時の天皇の立場が伝わり難いかなとも思いましたが、
天皇個人を描いていたのは斬新でしたし、とても静かな作品でした。
レビューを読ませて頂いただけですが、
こういう静かな作品、私も好きです。
日本でも上映されるといいんですが!

claudiacardinale said...

JTさん、「太陽」よかったですよね、05年度に見た映画のベスト1です。「アレキサンドラ」日本で上映されますよ、ソクーロフは日本で知名度高いし。たしか「エミルタージュ」はNHKもプロデューサーで入ってます。
ロシアの監督のこの独特な感じ大好きです。心を洗浄してくれるような気がします。

Anonymous said...

CCさん、こんばんは!
これはフランスも製作に参加しているようですが、最近東京でもロシア映画が公開されるように思えます。
「12人の怒れる男たち」もチェチェン少年が主人公でしたね。
チェチェン紛争って今だ終結してないのでしょうかね?
まぁでもアレクサンドラばあさんの徘徊はインパクトありました。「太陽」の監督ソクーロフってスゴイ!人だわ。

claudiacardinale said...

margot嬢、早速のおこしありがとうございます!
最近のロシアはグルジアとヨーロッパへのガス供給で忙しくてチェチェンはどうしているのでしょう?まだ火種がくすぶっているんでしょうね、こういう民族問題は根が深いです。

ソクーロフは色々いる監督の中でもトップクラスの腕を持ってますね。これからも作品がとても楽しみです。ソクーロフをはじめロシアの監督の感性はダダダ大好きです〜。\