25 October 2007

Sicko

Sicko by Michael Moore 2007 USA

楽しみにしていたマイケル・ムーア監督の「シッコ」。いつもの調子ながら面白可笑しく見ましたが、同時に社会において基本的人権に含まれる物は?という根本的な概念について改めて考えさせられるドキュメンタリーでした。アメリカの医療保険制度、私有化/民営化された為に起こる弊害について深く追求した内容です。



アメリカの健康保険充実度は世界37位、6人に一人が無保険で、毎年1.8万人が治療を受けられずに死んでいく。なぜなら国民健康保険が充実しておらず、大半は馬鹿高い民営の医療保険を購入、そしてその中でも比較的月負担額が少ないHMOシステム(
Health Maintenance Organization)、医療費抑制を目的に設立された会員制の医療保険組織に加入しているからだ。保険会社は支出を出来るだけ減らす為に、あらゆる手を使って医療申請書に「Decline」却下のはんこをおす。交通事故を起こして救急車で運ばれた女性、彼女の所有する保険会社から使った救急車は使う前に保険会社が許可していないからと救急車代を請求され、70代後半の老夫婦は2人の薬代の為旦那さんは働き続け、癌になった夫婦は保険に加入してながらも負担額があまりにも大きく自己破産し、HMOのネットワークでない救急病院に運ばれ拒否されたらい回しにされ亡くなった子供。
先進国アメリカで起きる数知れないこの状況に疑問を持ったムーア監督は、医療保険制度が充実しているカナダ、イギリス、フランス、そしてキューバを訪れる。なぜアメリカはこんな基本的な事が出来ないのか、この疑問にメスを入れる。

たしかに、私もアメリカにいた時はバカ高い保険料を月々払ってました。会社に所属していると保険加入が出来るのですが、これがフリーランスとなると大変です。ユニオンに入るかなにかしないと保険が購入出来ません。共同購入すると月の保険料が安くなるというメリット。個人で契約して保険にはいると、月の保険料があまりにもバカ高くてほぼ無理な状態です。フリーランス時に購入した保険には歯は含まれていなかったので、歯がイタくなると、ネットで加入出来る歯の治療プラン(保険ではないのですが、1年購入でネットワークの歯医者だったら通常治療価格の40%程ディスカウントされるシステム)を急いで購入し、ちょっと数日時間をおいてネットワークの歯医者に行くという感じでした。また若いからと勧められた月負担額の比較的安い医療保険に加入したのですが、よーく調べてみると色々と制限がある。こんなんじゃ癌になったらどうしよう、死ぬしかないのかしら・・・とよく考えていたものです。ホント愚痴をいいだすときりがない。なので今このイギリスがどれだけ天国に思えるか!!です。

社会が運営するのに基本的に必要な事、インフラストラクチャーとそして教育や医療などのHuman Capital。アメリカはお金持ちが生まれる国、お金があったら天国のような国。医療システムや福祉が充実しているフランスやドイツなど税金が高くてお金持ちになるチャンス(とはいっても大金持ちレベル)があまりないと言われていますが、国として社会として健全に発展して行く為には何が本当に必要なのかがこの作品では問われていました。マイケル・ムーア監督がこの上映に参加予定だったのですが生憎欠席、でもこの作品でインタビューされていた国会議員のTony Bennが来てました。この作品見る価値高いです。

余談:この上映で各席に無料でチョコレートとペットボトルのお水が提供されていました。ペットボトル??と思い、帰って来てから思わずマイケル・ムーア監督宛にペットボトルあったけど知ってた?とメールを送ってしまった次第です。読まれるんだろうか???

6 comments:

Anonymous said...

まだ日本でもやってるのかな?
と、見られないままに時が過ぎています(汗)
先進8カ国で最も所得格差があるアメリカって、1%の人が50%の富を握ってるんですから、考えてみたら恐ろしく貧富の差が激しいんですよね!
日本もジニ係数がジワジワ上がってますが、最近は身を持って格差を感じることがあります。
とにかく、格差が開くと犯罪率や自殺率が上がるのは確かで、
社会保障制度と健全な社会って密接な関係がありますよね。
CCさん、米国時代にはご苦労されたようですね。
アメリカの映画界の話になると必ずユニオンのことが話題になるけど、
国が護ってくれないなら自分の身は自分でという感じなのでしょうか?

claudiacardinale said...

JTさん、「1%の人が50%の富を握ってる」なんですか、知りませんでした。恐ろしいです・・・
日本も、イギリスもだんだんとアメリカ化していくんですね、不可抗力。
今興味があるのがフランスです。あのストばかりしているフランス国民にサルコジ政権どうやって改革を行って行くのでしょう?
アメリカもユニオン多いですけど、フランスみたいにいつも強行ストというのはあまり聞きません。(あっそういえば2年前にNYの地下鉄がストを行って大変だった)フランス人ってそういう意味で意志/主張の強い、行動力のある人達だと感心します。

o_pittarison said...

お久しぶりです。9月の私の記事にコメントありがとうございました。
日本はホント、アメリカの言いなりでどうしようもなくなって来てますね。みんないつまで黙ってんだか・・・
財界は大儲けしていながら法人税を下げろ、消費税は17%まで上げろ、と手前勝手なことをヌカしてます。軍事費も聖域。
結果として、社会保障の給付額はGDP比で19%。ヨーロッパの平均は28%。アメリカは16.6%です。こんな状態はやはり真似たくないですね。

claudiacardinale said...

pittarisonさん、お久しぶりです、お元気でしたか?アメリカが16.6%とは!なんか大きい数字で逆にびっくりしてしまいました。もっと少ないような気がしますが。日本が19%、本当にアメリカの様な道を辿ってますね。残念です。

Anonymous said...

ついにご覧になったんですね!
予想以上に迫力があり、身につまされる内容だったようですね。この映画の影響で、米国で何かが変わるでしょうか。

claudiacardinale said...

ビアンカさん、こんにちわ。そちらのブログを再度読ませてもらいました。「監督自身や同行者の体型の無言のメッセージ」、「サイコ」と「シッコ」とビアンカさん、するどいです!
これでアメリカの医療保険制度がなにかしらよくなってくれるといいんですけどね。ヒラリーが当選したらなにかと変わるといいんですけど・・。

ビアンカさんの最新記事読みました。「介護」はいずれ私も考えなくては行けない事。後でおじゃましますね。