Glenn Gould : Hereafter by Bruno Monsaingeon 2005 France
20世紀を代表する偉大なピアニスト、グレン・グールドのドキュメンタリー。冬でもないのにいつも襟巻きと手袋をし、ぼそぼそと呟きながら弾くピアノ、そして38歳でステージから突然消えてしまい録音だけを続けたエキセントリックなグールド。クラシックというといかに忠実に作曲家の意図を表現するかが主体の中、彼はそれを掘り下げ新しい表現を試み、ピアニストの範疇だけで納められない哲学者的音楽家。彼の弾くバッハの『ゴルトベルク変奏曲』を初めて聞いた時の衝撃、感動は今でも忘れられない、精神病患者が奏でる、なにかを訴えるような音に聞こえてしまったから。
という訳で評論では賛否両論で大きく別れているグールド。このドキュメンタリーでは音楽家のグールドの精神を捉えており、また貴重な彼の映像も収録。クオリティーの高い作品である。以前Francois Gilard監督の「Thirty -Two Short Films about Glenn Gould」を観たが これは一体なんなのととても憤慨した覚えがある。監督が持つグールドの音楽を基にイメージ的に構成された映画であったがあまりにも安っぽすぎて悲惨であった。どうも芸術家や音楽家を題材とした作品は自分の持つイメージと会わないと落胆してしまう。ジュリアン・テーモアーが監督した「フリーダ」は観ていて頭に来てしまった覚えがある。ケン・ラッセルの「マーラー」ではこんな状況で「交響曲第5番第四楽章アダージェット」が作曲されたの???と例をあげると枚挙にいとまが無い。これはグールドが好きな方には是非お勧めの作品です。
最近いくつか映画を観てますが悲惨な作品が続いてます。張藝謀の「Curse of the Gloden Flower」は見るに耐えられなかった。「Hero」「Lovers」とあれーこの監督どうしちゃったの?と感じてましたが、ここにきてとうとう芸術性が堕落してしまった。とにかく予算があったのでしょうか?やりたい事すべてつぎ込んだという具合です。
あと「Trainpotting」のダニー・ボイルの新作「Sunshine」これもひどすぎでほぼお笑い状態でした。異変を起こした太陽を救うため派遣された宇宙船の話。前作「28 Weeks Later」もひどかったので期待はしてなかったのですが「2001年宇宙の旅」を意識しすぎたのでしょうか、完全ダニー・ボイルのマスターベションでした。ちなみに真田広之が出てます。真田広之はいい役者!です。この映画ではさっさと前半で死んでしまったので救われました。とにかく今までいい作品を撮ってきた監督がこれだけ落ちてしまうのはどうも残念です。
そういえばロシアのロストロポーヴィチが亡くなりましたね。以前サンフランシスコで彼の指揮でチャイコフスキーの「悲壮」を聞きましたが、これは震撼、素晴らしかった。偉大な音楽家でした。そういえばソクーロフがロストロポーヴィチのドキュメンタリーを撮っていたとか、早速観たいです。
6 comments:
お久しぶりです!
グールドはやはり「変な音楽家」だったようですねぇ。もちろん生活面で。「どうにも変な音楽家」たる私が同僚のピアニストにあれこれ聞いてみても同じような感想でしたから。
しかし、インタビューをビデオで見たことがありましたが、そんなに変わった感じじゃなかったですね。
音楽的には至極真っ当なピアニストだったと思います。事実、世界中のピアニストがバッハを弾く場合、まず彼の演奏をベースにして自分の解釈をそれに加える、というのが当たり前になっています。
してみるとやはり一時代を切り拓いたゲージツカだったんだ、と思います。
syumitetuさん、ごぶさたしています。ちょこちょことそちらのブログにもお邪魔させてもらっています。
このドキュメンタリーにもグールドのインタビューが結構出ていますが、おっしゃる通り全く変わった感じはしませんでした。それ以上に言っている事にとてもさすがーっと納得したり、結構ユーモア的な事を言っているので(本人が自覚しているかどうかはわかりませんが)笑えたりと、私はどちらかというと天才的に見えてしまいました。何かの雑誌で彼はAttention Deficit Disorderだったと読みました。ADDの子供は天才型がおおいですよね。
こんにちは。お元気そうでなによりです。
あなたにすすめられた「ドリームガールズ」、見ようと思っているうちにアカデミー賞関連の映画になってしまい、新宿の新しい映画館では長蛇の列。あきらめて帰ってきました。
これからもいい映画を紹介してくださいね。よろしくお願いします。
yochyさん、お久しぶりです。「ドリームガールズ」見れなかったのですか?残念。これは迫力があるからDVDでみるより劇場の方がいいかも。そういえば今は連休ですよね、どこいっても長蛇の列、こういう時は家でのんびり「しずおかおでん」をたべながら映画鑑賞がいいですね。
初めまして。
つい最近、奇遇ながら、この映画の監督(ブルーノ)と一緒に映画を見る機会があったので記念に書き込みします。
監督、「未だにグールドが死んだ気がしない」って言ってたのが印象的でした。良くも悪くも、監督の元に届く手紙のほとんどがグールド繋がりのものだから、って言うのもあるみたいですけど。
ちなみに、同じ監督による、グールド関係の他のフィルムも素晴らしいので、機会があれば是非ご覧になってみてください。
Felixさん、こちらこそはじめまして。強烈なアーティストは生/死に関係なく精神的に現存するのでしょうね、監督の「未だにグールドが死んだ気がしない」という言葉から感じました。ブルーノ監督って他色々と音楽家のドキュメンタリーを制作していらっしゃるのですね。早速レンタルリストに追加です!
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