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31 August 2010

Claude Sautet

"Un Coeur En Hiver" 1992 & "Nelly and Mr. Arnaud" 1995 by Claude Sautet, France

先日出張でフランスに行った時フランス映画人から「フランス生粋の映画ならクロード・ソーテだ!」と太鼓判を押されたので早速レンタルで借りてきました。パリでは小津安次郎が人気でよく単館上映されているのですが、クロード・ソーテはフランス版オズという感じでしょうか。実は全く今までクロード・ソーテは知らなかったのですが、この「Un Coeur en Hiver/愛を弾く女」と「Nelly and Mr. Arnaud/とまどい」は生活の一部をそのままはぎ取ったような作りでした。なんとなくオズと通じるものがあると納得。
クロード・ソーテを調べてみるとあらっ「夕なぎ」を監督してたんですね。この知り合ったフランス映画人によると「クロード・ソーテはフランス国外ではあまり知られていないけど、彼がフランスを代表する監督の一人だ。トリュフォーもゴダールも外国では過大評価されてすぎている」と言ってました。 まあ後者2人はニューウェーブだからタイプが違うんですけどね。

この2本ではエマニュエル・バートが主演してました。彼女コケティッシュでかわいいけど一度も奇麗とは思った事はありませんでしたが、この作品ではノーブルな感じで奇麗でした。女優って監督によって変るんですね、まあこれが監督のセンス/腕なんでしょうね。

8 April 2010

Serpico

Serpico by Sidney Lumet 1973 USA

最近フィルム・ノアールについて友人と盛り上がり、以来レンタルDVDは見逃しているフィルム・ノアール系ばかり。「セルピコ」は73年に製作されたNY市警の汚職を告発した私服警察官フランク・セルピコの実話に基づいてます。このセルピコを演じるのがアル・パチーノ。ゴッド・ファーザー1での成功の後に撮影されています。ゴッド・ファーザー1でのアル・パチーノは素晴らしかったけど、どうしてもコッポラ&ブランドというイメージが強く感じられてしまいますが、このセルピコでのアル・パチーノの演技は抜群でそして彼がクリエイトする世界が強烈に感じられる、アル・パチーノの代表作ではないでしょうか。

当時新しく発売されたEastman Kodak 5254のフィルムは光量を多く必要としなかったため70年代フィルム・ノアール独特のざらついたイメージがまたいい要素となっています。

最近スコセッシの新作デカプリオ主演「シャター・アイランド」を見たのですが、う〜んぜんぜん良くなかったのでここに書く気なしです。

15 March 2010

The Cove

The Cove by Louie Psihoyos 2009 USA

なにかと日本で話題となっているアカデミー賞のドキュメンタリー部門受賞作「ザ・コーブ」、友人が日本からロンドンへの機中で見たと言っていたので(勿論日系の航空会社ではありません)、DVDレンタルで出てるだろうと思い早速借りて見ました。面白い、まるで007の様とか聞いていましたが、ドキュメンタリーとしてはやはりとても見応えがありとても面白い作りでした。007という意味も納得。

アメリカ60年代、チャーミングなイルカで大人気だったTV 番組「フリッパー」、このイルカのフリッパーをトレーニングし巨大ビジネスとなったイルカショーの礎となった人物リック・オーベリー。フリッパーの死を境に、イルカを捕獲し芸を教え込むという反動物保護的行動に疑問を抱き、イルカ解放運動の現在に至り全世界で活動を行なっている。和歌山県太地町、ここでは昔ながらのイルカ漁が行なわれ、この事実は殆ど報道されていない。このイルカを救う為、この行為を告発する為にオーベリーを先頭とする動物愛護家のグループは太地町に潜入、何が行なわれているかの撮影に挑む。

このドキュメンタリー、動物愛護関連のドキュメンタリーにありがちな独りよがりな内容ではなく、バランスをもったものです。またドキュメンタリーの中心の流れはこの元イルカ・トレーナーであったオーベリーの活動であり、この軸がしっかりと全体を通してフォーカスしてあり、複雑な内容になりがちな捕鯨などのサブ的要素も含みつつでもしっかりと仕上がってます。

私的にクジラ肉やイルカ肉は食べたいとも思わないし、絶滅の危機に瀕している種をわざわざ食べなくてもと私は捕鯨反対でもありますが、このトピックに関してはすんなりと納得出来ないのも事実です。クジラやイルカはほ乳類、知的な生き物とかこの手の題材の多くの論議は感情論が殆どで、じゃあ豚もそうとう賢い動物だけど一体なにが違うんだ??とも思ってしまいます。殺し方?まあ苦しみもがいて死んで行くのは見過ごせるものではないので、海中に電気ショックで一発で殺せる様な屠殺場をつくったら許されるのか?と非現実的な方向へとも走ってしまいます。まあこの太地町の漁師さん達の言い分も分かりますが、やはりこの残虐な殺し方をなんとかしてほしいです。またイルカの肉なんて市場では流通しないので殺す必要もないのではとも感じます。まあいずれにしても捕鯨国である日本、現在はマグロでまた一問題ありそうですが、水産資源を主食としている国だからこそ責任をもって資源を守るという姿勢を打ち出してもらいたいものです。

10 April 2008

Exodus

「栄光への脱出」by Otto Preminger 1960 USA

イスラエル建国が題材のものが見たくてポール・ニューマン主演の「栄光への脱出」をレンタルしてきた。スイッチ・オンにして初めて気がついたのがアーネスト・ゴールド作曲のテーマ曲。この作品のサウンドトラックだったんだとなにげに納得。今現在この題材で映画をつくるのは政治的にほぼ不可能に近いと思うが、話に聞くと制作当時50−60年代、欧米ではユダヤ人、イスラエルに同情的な傾向にあったそう。だからこの映画を作る事が出来たんだなぁとこれまた妙に納得であった。1958年ベストセラー、レオン・ユリス「エクソダス 栄光への脱出」が原作。

第二次大戦後、解放されながらも事実ヨーロッパで行き場を失ったユダヤ人はイスラエル、パレスティナの地を目指して民族大移動が始まる。当時40年代、パレスティナはイギリス占領下。アラブとの摩擦を恐れた英政府はパレスティナを目指すユダヤ人入植者を乗せた船をキプロスで拘留する。ユダヤ人地下組織リーダーのアリ(ポール・ニューマン)は工作を図りエクソダス号(脱出)に乗り込みパレスティナの地を目指す。一方この工作に気がついた英サザーランド将軍(レイフ・リチャードソン)はエクソダスを阻止するが、エクソダスに乗るユダヤ人のハンガーストライキに断念する。パレスティナの地に辿り着いたユダヤ人達。アラブ人との共存、そしてイスラエル独立テロ、英政府排斥運動、国連のイスラエル/アラブ分割決議と、そこから始まる第一次中東戦争へと続く。

話の中で、ユダヤ人問題になにも関心がなかったアメリカ人未亡人看護婦キティー(エバ・マリー・セイント)がエクソダスに乗る女の子カレン(ジル・ハワース)やアリを通して現実に目覚め関わっていく姿がある。このキティーを通してユダヤ人の歴史というものが語られているような感じであった。イスラエル独立テロに加担する少年の口から語られるユダヤ人強制収容所での想像を絶する体験など、人間の不条理が多く語られている。キティーがカレンを養子にしてアメリカに連れて行こうとするのにユダヤ人医師は「この子達はすざましい体験をした。愛されずに今まで育ってきた、この子は愛情を多大に求めあなたを枯渇させるだろう、それに耐えられるか?」という台詞、またアリが最後まで「アラブとの共存」を叫んでいたのがとても印象に残っている。

まあこの映画は勿論イスラエル側から語られているが、イスラエル建国を知るにはいい映画かもしれない。映画としては大作でかなり興味深く見る事ができた。それにしても、平和な国で生まれ育った人間としては、やはりユダヤ人の歴史はすごいものがあり、またイスラエル/パレスティナ問題も根深いものがあると再度感じさせられた。

5 October 2007

Singin'in the Rain

雨に歌えば by Stanley Donen & Gene Kelly 1952 USA


I'm singing in the rain, Just singin' in the rain, What a glorious feeling I'm happy again

と聞くと直ぐにスタンリー・キューブリックの「時計仕掛けのオレンジ」を思い起こしてしまうのは私だけでしょうか?久々に「雨に歌えば」を見ました。いやー、いつ見てもこのミュージカルはハッピーにさせてくれます。



ドン(ジーン・ケリー)とコスモ(ドナルド・オカーナー)は幼なじみ。芸が達者で映画スタジオでサイレント映画の演奏家として雇われる。そこからドンはスタントマンとして役者の道へ、そして花形スターとして成功する。時はちょうどサイレンとからトーキーへ変換。ドンとペアーで花形女優のリナ(ジーン・ヘーガン)は映りはいいが喋らすと最悪。
この2人の初トーキー主演映画を救う為にコスモとドンの恋人、無名本格派女優キャッシー(デビー・レイノルズ)は口パク作戦へと乗り出す。

あまりにも有名なジーン・ケリーの「雨に歌えば」の雨の路上シーンはやっぱり最高。またジーン・ケリー、ドナルド・オカーナー、デビー・レイノルズのダンスシーンもすごい!凄いという言葉以外どう言っていいのかしら?
プロデューサーのアーサー・フリードもこれまたミュージカルの金字塔のような人。「雨に歌えば」の作詞は勿論「巴里のアメリカ人」や「Gigi」など製作してます。

1930−40年代のジュディー・ガーランドとフレッド・アステアーからはじまりジーン・ケリーのやジンジャー・ロジャースなどハリウッド・ミュージカル黄金期は多くの偉大なエンターテイナーを生み出した。TVに乗っ取られる前のこの頃のハリウッドは凄かったんでしょうね。このミュージカルを見ていると後のミュージカル、ボブ・フォッシーなんかへの歴史が感じられます。

31 August 2007

Bananas

Bananas by Woody Allen 1971 USA

「ウディ・アレンのバナナ」を見た。ウディ・アレンの作品は殆ど網羅したと思っていたがこれは見ていなかった。監督第2作目。初期の作品はあまりにもバカすぎて笑いが止まらないのが多いがこれも例外ではなかった。

お決まりキャラクター、ウディ・アレン演じるちびで超神経質で口やかましいNYユダヤ人のフィルディング・メリッシュ(なんという名前!)は新しく開発された商品のテスター。ある日南アメリカの独裁国家San Marcoの解放軍支援を行うナンシー(ルイス・ラッサー)と出会い恋に落ちる。政治プロテストなどに参加しのめり込みまくるが、結局ふられてしまう。失恋の痛手に一念発起してSan Marcoに行く事を決意する。現地で解放軍ゲリラになぜかしら参加し、彼の運命は・・・。

何一つ真面目に描かれてなく、ここまでする??という程自虐的なギャグの連続。どうもこのウディ・アレンのキャラクターをみていると、NYにいるユダヤ人の友人数名をいつも思い起こさせてくれる。頭は無茶苦茶いいけど超神経質で熱しやすくて、???と思う事を好き放題しゃべりまくりなににでも顔をつっこみと、まあ短時間一緒にいるととても楽しいのですが、長時間一緒にいると拷問状態です。NYの白人は殆どがユダヤ人なのでこういう人達が回りに多いです。とはいいつつロンドンも同じかしら。

話は映画に戻し、フィルディングが地下鉄でチンピラ2人に追いかけられるシーンがあるのですが、このチンピラの一人は若き駆け出し俳優のロッキーことシルベスタ・スタローンでした。あのマッチョな体は昔からなんですね。ナンシー役のルイス・ラッサーはウディ・アレンの一番目の妻。ウディ・アレンはいつも付き合っている女優を映画にだしますね、ダイアン・キートン、ミア・ファロウなどなど。最近ではセクシー系が多いです。次の作品もスカーレット・ヨハンセンじゃなかったかな?一体今までに何作撮ってるんだろうと思い調べたら次作で43本目でした。ちなみに次作ペネロペも出演しています。最近ヨーロッパロケが多いウディ・アレン、久々にNYで撮ってほしいですね。もしくは原点に帰り日本でなにかお話を作って頂きたいです。

28 August 2007

The Bride Wore Black

The Bride Wore Black by Francois Truffaut 1968 France


トリュフォー監督スリラー、ジャンヌ・モロー主演「黒衣の花嫁」を見た。当時ジャンヌ・モローは40代前半、ちょっと老けて来たかなぁ、この役には多少厳しい?と思いながらも結構面白い作品であった。

原作はWilliam Irish(Cornell Woolrich)。ジャンヌ・モロー演ずるジュリーが次々と男性5人(
クロード・リーシュ、ミシェル・ブーケ、ミシェル・ロンスダール、シャルル・デネル、ダニエル・ブーランジェ)を殺害していく。彼らの友人であったコーレイ(ジャン=クロード・ブリアリ)の記憶よってジュリーは逮捕される。そして次第に彼女の殺害動機が明らかにされる。



ジャンヌ・モローというと「死刑台のエレベーター」。殺人に加担する女性を演じると、こうなんとなくしっくりきてダークな部分を上手く感じさせてくれる。この「黒衣の花嫁」も復讐を誓うミステリアスな恐ろしい女性が板についていた。彼女の官能的な顔が危険な女を演じさせるといいのでしょうか。
最近では「ニキータ」や「ぼくを葬る」で出演してましたが、官能的な部分はまったく衰えてませんでした。

この作品、60年代のファッションやインテリアなど他の部分でも楽しませて頂きました。上の写真をみても、いやーやっぱりモローはいいですねぇ。



どうしても見たいという作品がないのかどうも劇場から足が遠のいてしてまっているこの頃ですが、友人がマット・デイモン主演の「The Bourne Ultimatum」をみると007が子供に見えると絶賛していたのでちょっと近いうちに見てきます。

14 May 2007

Le Notti Bianche

白夜 by Luchino Visconti 1957 Italy/France

ビスコンティーが撮るドフトエフスキーの「白夜」、一体どんな作品になっているだろうと興味津々で見た。

ベニスに来たばかりのマリオ(マルチェロ・マストロヤンニ)はある晩橋の上で泣いている女性ナタリア(マリア・ショル)に出会う。ナタリアは1年前に別れた恋人との再開の約束の為毎晩橋の上で待っているのだった。ナタリアとの出会いから三日間マリオはナタリアを慰め外に連れ出し、恋に落ちる。そしてナタリアも現実を理解しマリオに心を傾けるが・・・

原作は読んだ事がないのですが、舞台がサントベルグからベニスに、そしてマルチェロと、あまりにも芋臭いマリア・ショルのキャスティングで、ドフトエフスキー独特の暗さを超越し、とてつもない各キャラクターの自己顕示欲の強さについつい笑いがこみ上げてきそうになるが、ここはやはりビスコンティー、このナルシスト加減をぎりぎりボーダーライン、青春という強さと美しさに描き変えていた。とはいいつつやはり笑いをこらえきれなかったのが正直な処です。この描写法が後の作品では彼の持ち味となっていくんでしょうね。

それにしても若き頃のマルチェロは、なんといってもいい。歳をとったマルチェロも断然いいけど、この人はとにかくチャーミングな役者です。初めてマルチェロを見たのは確かフェリーニの「8 1/2」だったような。だれこれは!ととんでもなく魅了されました。その後数限りなくマルチェロをみましたが一度も裏切られた事はありません!というか組んでいる監督がいいんでしょうね。

28 April 2007

Glenn Gould : Hereafter

Glenn Gould : Hereafter by Bruno Monsaingeon 2005 France

20世紀を代表する偉大なピアニスト、グレン・グールドのドキュメンタリー。冬でもないのにいつも襟巻きと手袋をし、ぼそぼそと呟きながら弾くピアノ、そして38歳でステージから突然消えてしまい録音だけを続けたエキセントリックなグールド。クラシックというといかに忠実に作曲家の意図を表現するかが主体の中、彼はそれを掘り下げ新しい表現を試み、ピアニストの範疇だけで納められない哲学者的音楽家。彼の弾くバッハの『ゴルトベルク変奏曲』を初めて聞いた時の衝撃、感動は今でも忘れられない、精神病患者が奏でる、なにかを訴えるような音に聞こえてしまったから。

という訳で評論では賛否両論で大きく別れているグールド。このドキュメンタリーでは
音楽家のグールドの精神を捉えており、また貴重な彼の映像も収録。クオリティーの高い作品である。以前Francois Gilard監督の「Thirty -Two Short Films about Glenn Gould」を観たが これは一体なんなのととても憤慨した覚えがある。監督が持つグールドの音楽を基にイメージ的に構成された映画であったがあまりにも安っぽすぎて悲惨であった。どうも芸術家や音楽家を題材とした作品は自分の持つイメージと会わないと落胆してしまう。ジュリアン・テーモアーが監督した「フリーダ」は観ていて頭に来てしまった覚えがある。ケン・ラッセルの「マーラー」ではこんな状況で「交響曲第5番第四楽章アダージェット」が作曲されたの???と例をあげると枚挙にいとまが無い。これはグールドが好きな方には是非お勧めの作品です。

最近いくつか映画を観てますが悲惨な作品が続いてます。張藝謀の「Curse of the Gloden Flower」は見るに耐えられなかった。「Hero」「Lovers」とあれーこの監督どうしちゃったの?と感じてましたが、ここにきてとうとう芸術性が堕落してしまった。とにかく予算があったのでしょうか?やりたい事すべてつぎ込んだという具合です。
あと「Trainpotting」のダニー・ボイルの新作「Sunshine」これもひどすぎでほぼお笑い状態でした。異変を起こした太陽を救うため派遣された宇宙船の話。前作「28 Weeks Later」もひどかったので期待はしてなかったのですが「2001年宇宙の旅」を意識しすぎたのでしょうか、完全ダニー・ボイルのマスターベションでした。ちなみに真田広之が出てます。真田広之はいい役者!です。この映画ではさっさと前半で死んでしまったので救われました。とにかく今までいい作品を撮ってきた監督がこれだけ落ちてしまうのはどうも残念です。

そういえばロシアの
ロストロポーヴィチが亡くなりましたね。以前サンフランシスコで彼の指揮でチャイコフスキーの「悲壮」を聞きましたが、これは震撼、素晴らしかった。偉大な音楽家でした。そういえばソクーロフがロストロポーヴィチのドキュメンタリーを撮っていたとか、早速観たいです。

11 March 2007

Thumbsucker

Thumbsucker by Mike Milles USA 2005

Mike Millesといえば元ソフィア・コッポラの旦那Spike Jonze、そしてMichael Gondryとよく比べられる。この3人の監督はコマーシャルそしてミュージック・ビデオ上がり、またSpike Jonzeを中心としてつながりも強い。初めてみるマイク・ミルズの作品、スタイリッシュな映像とオブセキュアーな内容だろうと思いながらDVDを見始めたら、やっぱりその通りであった。

17歳の高校生Justine(Lou Taylor Pucci)は親指をしゃぶる癖がまだ抜け切らない。性格はシャイで孤独に陥る傾向にあるが、なんとか自分の殻から脱皮したいと願っている。学校の討論クラスに入るがどうも上手くいかない。母親のAudrey(Tilda Swinton)はTV俳優のMatt(Benjamin Bratt)に首ったけの麻薬患者のセラピスト。工場のマネージャーである父親Vincent(Mike Cobb)は息子の悩みへのアドバイスを与えるが全く効き目がない。ヒッピーの歯医者(Keanu Reeves)はJustineに親指しゃぶりを止めさそうと催眠療法を施す。またJustineは医者からADD(注意欠陥/多動性障害)と診断され投薬を処方される。これをきっかけにJustineはめきめきと才能を開花させ始める。

思春期の悩み、そしてその心情の過程が巧妙でありながらさっぱりと描かれ、フレッシュな後味の作品であった。ソフィア・コッポラを初めやはりこの類いの監督の作品には共通する点がある。下手なダイオローグで構成するよりも映像で見せる部分であろうか。スパイク・ジョーンズやマイケル・ゴンドリーは脚本家のチャーリー・カフマンと組んで成功している。マイク・ミルズも?と思い調べたら自身で書いた物であった。このグループの傾向はなんといえばいいのか、昔で言えばリアリズモやヌーベルバーグ、現代映画の一つの潮流ですね。

11 December 2006

Fawlty Towers

Fawlty Towers by BBC TV Series 1975, UK

Monty PythonでおなじみのJohn Cleese主演コメディーシリーズ。放映から約30年以上経っているに関わらず色あせる事無く大笑いさせていただいた。

Basil Fawlty (John Cleese)とSybil夫妻が経営するイギリス田舎のBed & BreakfastのFawlty Towers。Basilはやる事成す事全てドジ踏みっぱなし。パラノイアで傲慢で短気なBasilはSybilにいつも「ベージル!!!」と怒鳴られ尻に敷かれている。Basilが賃金が安い理由に雇ったスペイン人バルセロナ出身Maunuelは英語が全くダメでおっちょこちょい、いつもBasilから攻撃を受けている。受付嬢のお色気スイートハートのPollyはPollyでいい加減。このはちゃめちゃなFaulty Towersで繰り広げられる辛口ながらもスイートなコメディー。



このコメディー、70年代制作ながらも現在もカルト的ファンを魅了し続けている。日本で言うとなんでしょう?かなり違うかもしれませんが雰囲気的には「8時だよ、全員集合!」の「ちょっとだけよ、あんたも好きねぇ〜」の加トちゃん的なチャーミングさなのでしょうか??(多分英国人にとっては???)ちゃんちゃかちゃんちゃん、ちゃんちゃんちゃんと突然ムード音楽が流れライティングがピンクに変わってと、今思うと子供の私にはさっぱりなんだか分かっていなかったけどなんかこれはやばいエッチな事だと直感。「あんたも好きねぇ〜」なんてすごいギャグですねー、今のご時世じゃこの手のジョークを子供番組でするなんて考えられませんね。という意味で昔はとっても寛大だったんですねぇ。なんでもかんでも適切でない、ポリティカリーインコレクトだとちょっとした事で攻撃される今の時代、この位寛大な社会の方が健全なんでしょうね。話が随分それましたが、「Fawlty Towers」面白いです。

7 October 2006

Withnail and I

Withnail and I by Bruce Robinson 1987 UK

イギリスでカルト的人気のある「Withnail and I 」を観た。アッパークラス出身のWithnail (Richard E Grand) とグラマースクール出のMarwood (Paul McGrann)。(アッパークラスでない普通の出来のいい子が行く学校)1969年ロンドンはカムデンタウンのフラットに住む貧乏役者のこの二人はド ラッグに溺れながら60−70年代カルチャーをそのまま体現するが、Marwoodは現実の世界へと脱皮していく。

だれもが経験する無謀なティーンエイジの時期。この過程が時代、社会背景と共に描かれ、イギリス版「ミッドナイト・カーボーイ」という感じであった。Withnailの金持ちゲイの叔父役にRichard Griffithsが演じているがこれまたいい感じであった。

プロデューサーにジョージ・ハリソン。これだけでもこの作品のタッチがわかるであろう。見終わった後甘くも辛くも酸っぱくと後味のいい映画であった。

話は変わって、フライトの中で「The Devil Wears Prada」を観た。メリル・ストリープが米一流ファッション雑誌編集長を演じてそこにアシスタントとして入る小娘の話。コメディーだがあまりにもひどい 出来で呆然としてしまった。話があまりにもありきたり。この映画の主役を演じていたこの小娘役のAnne Hathawayは第2のペネロペとして売り出しているんでしょうか?そっくりです。「ブロークバック・マウンテン」とはちょっと違うイメージ。この小娘 のライバルビッチ役のEmily Bluntはまあなかなか将来を期待させる女優でした。でStanley Tucciは安定感です。

17 August 2006

The Last Mitterrand

The Last Mitterrand by Robert Guediguian 2005 France

癌に冒され余命僅かとなった1981−95年までフランス大統領を努めたミッテラン(Michael Bouguet)は30歳の若いジャーナリストAntoine (Jalil Lespert) を自伝執筆に任命する。この映画の殆どはミッテランの社会主義的政策をはじめド・ゴールとのライバル心、彼の政治哲学を自らが語ったものだが、一方 Antoineはミッテランの初期加入していた反ユダヤ・ファシスト団体アクション・フランセーズについて、また多くのユダヤ人をドイツに引き渡したヴィ シー政権の責任などについても追求する。

ミッテランは映画の中で「フランスを色に例えると灰色だ、灰色は様々な色彩をもっている。ラベンダーの灰色、森林の灰色・・・」と語っている様、この映画 のトーンも灰色で撮影されている。(えっラベンダーは灰色?フランスが灰色とは面白い事を言う人だと思ってしまいました)

個人的にミッテラン大統領そして当時のフランス社会にあまり詳しくないので、この映画の詳細を理解するのに多少苦労した。しかしながらミッテランの語りは様々の面で造詣が深く非常に興味深いものがあった。

ミッテランを演じたMichael Bouguet は容姿がとても似ている。この映画を見た知り合いにいわせれば挙動もかなり似ているそうだ。

歴史的人物を主題とした映画は枚挙にいとまがないが、この作品では人生を終えようとしているミッテランとミッテラン政権を経験していない世代の若い Antoineが当事者を通して激動の時代を理解しようとするミニマムな設定の中、ミッテランという主人公が大きく浮き彫りされた作品であった。見応えは 抜群です。

15 July 2006

Memories of Murder

殺人の記憶 by Joon-ho Bong 韓国 2003

今年度カンヌでボン・ジュノ監督の「モンスター」がスタンディングオベーションを受けたと聞いたので一度もこの監督の作品を見た事がない私は早速「殺人の記 憶」を見てみました。はじめはふーんこんなものかぁと思っていたが、映画が進行するに連れて話に重みが出てきて、全体としてみるとインパクトがあり面白 かった。韓国地方都市で起きる連続殺人事件、これを担当する地元刑事パク、そしてソウルから援護にきたエリート刑事ソ。この2人の性格は対照的。荒削りで 出鱈目捜査のパク、そして洗練された操作方法のソだが、事件が錯綜し糾明出来ずの状態に陥った時この2人の刑事の根本的な性質が逆転する。様々な伏線が集 合しこのクライマックスを築く、この流れが非常に面白かった。

「モンスター」はタイトルの通り怪獣映画だそう。この監督だから「キングコング」などとは違ったテイスト、どちらかというと円谷プロダクション系かゴジラかというテイストだと想像出来る。「殺人の記憶」が面白かったのでまあ見てみたい気がします。

12 June 2006

Crash

Crash

Crash by Paul Haggis 2005 USA

今 年度米アカデミー賞ベストピクチャーの作品。監督のポール・ハギスは「ミリオンダラー・ベイビー」の脚本家。公開当初からどうもジェニファー・エスポジト がマット・ディロンの横で泣き叫ぶポスターを観ていまいち受け付けない状態だったが、先週大風邪をひき死人状態でどこにもいけなかったのでやっとこの作品 をケーブルTVでみた。アメリカというか特にカリフォルニアが抱える社会問題を軸に登場人物が皆絶望状態に陥るが最後に希望の光が見えるという、あーだめ だ、ポール・ハギスだから内容は大体予想していたがやっぱり上手く書けすぎたハリウッド映画領域だった。なんでこれがベストピクチャーなんぞ受賞したんだ ろう?観ていて手法がポール・トーマス・アンダーソンの「マグノイア」と結構類似しているなーと思えてしまった。とにかくこの映画の欠点は上手く書けすぎ で臭くなってしまっているというのが感想。その中でもゲスなLAPD役のマット・ディロンは嫌み無くよかった。

1 June 2006

Soy Cuba

Soy Cuba by Mikheil Kalatozishvili 1964 USSR/Cuba

アメリカによる経済封鎖が行われる前1964年に実際キューバで撮影された旧ソ連によるプロパガンダ映画。ソ連崩壊後にこの映画が見つかり2001年のカン ヌで世界に試写された。美しいキューバの大地からバティスタ政権そしてカストロ政権までを描いているが、その映像、カメラワークは素晴らしく初めのシーン はなんとなく小津の初期白黒映像を思い起こすものがあった。また詩的に映像が綴られている事もあり、勿論プロパガンダ映画なのでいかにキューバ国民がアメ リカ搾取にあえぎ社会主義が台頭したのかだが、今この時代にこの映画をみるとプロパガンダが逆に人間社会そしてアイデオロジーの悲哀をひしとつたえるもの となっているように感じた。
プロパガンダ映画ではナチ政権のリーフェンシュタールが有名だが、数年前に見た時力と繁栄という印象が強く感じられたがこれもまたある種のむなしさを醸し出していた。
それにしてもキューバがこれほど奇麗な場所だったとは!この映像をみて感動してしまった。そういえば幼少の頃カストロを逃れてアメリカに移住してきた知人 の話を思い出した。彼は老いた両親と共に2000年に入ってからキューバを訪れ、当時住んでいた家に行ったそうだ。その家はまだ残っており、住人に中を見 せてもらったら当時逃げた時そのままの家具、インテリアだったそうで閉ざされた時代のブランクを強く感じたそうだ。
ロンドンのICA で見たのですがDVDも既にでているそうです。

11 May 2006

My Darling Clementine

My Darling Clementine by John Ford 1946 USA

「Oh my Darling, Oh my Darling, Oh my Darling, Clementine~」の歌詞でおなじみの西部劇の骨頂「荒野の決闘」。長い間西部劇には興味がなかったが、知人の西部劇オタクのカメラマンに影響を受 け数年前から見出したら、あらっアメリカ版任侠映画って感じで面白さを発見。この「荒野の決闘」はいかにも昼メロ的内容だがジョン・フォードの手にかかる とそれが完成されたものになっている。無法地帯となっている西部の街で起こるLaw and Order、Wyatt Earpの実話が元になっている。この街に集まる人々の人間臭さがなんとも面白い。やはり西部劇、馬車が荒野を疾走するシーンや馬に乗って駆け抜けるシー ンなど迫力があり60年前にどうやって撮影したんだろう??これが今のハリウッドの強さの根底になっているんだろうとつくづく思わされてしまう。ジョン・ フォードと黒沢明はよく比較されるが、やっぱりこの2人の映像の力強さというものには凄い物がある。 1946年に黒沢が何を撮っていたかを調べてみると、「我が青春に悔いなし」であった。原節子が気骨のある女性を演じていたのをよーく覚えている。ちなみ にジョン・フォードの「荒野の7人」の参考となった黒沢の「7人の侍」は54年製作で、「羅生門」は50年製作であった。

18 March 2006

Ivan's Childhood

Ivan's Childhood by Andrei Tarkovsky 1962 Russia

モノクロに映し出されるタルコフスキーの映像美。日本語タイトルは「僕の村は戦場だった」。第二次世界大戦中ナチに両親を殺されパルチザン少年としてロシア 軍のスパイとなるイワン。3人のロシア将校に息子としてかわいがられ戦場から引き離そうとされるが、ナチへの復習を誓うイワンはそのまま強靭な意志によっ て再度スパイとして敵陣へと戻って行く。舞台はロシア東前線の沼地。ロシア兵から逃れイワンが泳ぎきる河、川向こうにある敵陣、回想シーンでの井戸水、タ ルコフスキーの他の作品同様この映画でも水という要素が大きく占め過去と現在、現実と憧憬のトランスフォーメーションの役割をしている。戦争を題材にしな がらも、素晴らしく美しい映画。それが対照的になり戦争の無惨さ、悲哀が強く伝わってくる。62年ベニチア映画祭グランプリ作品。

9 January 2006

The Battle of Algeriers

The Battle of Algeriers by Gillo Pontecorvo 1965 Algeria/Italy

シネマ・ベリテそしてドキュメンタリー的に描かれたこのアルジェリア独立運動の映画はハリウッド特有の押し付けがましさが全く無く、現代の問題にも充分通じ る普遍性を持った映画だ。1957年を中心にフランス植民地化のアルジェリア独立解放機構の秘密組織と活動、そしてそれを陰ながら支援するコミュニ ティー。一方支配側の権利を主張し鎮静しようとする仏軍。勿論見ている者は倫理的にアルジェリア独立解放機構に情を寄せるが、仏軍の将校もそれなりに描か れており映画場では平等的に扱われている。これがハリウッド的描写と一角線を引く要素かもしれない。

26 December 2005

Wages of Fear

Wages of Fear by Henri-Georges Clouzot 1952 France

南米に職を求めて各国から来た流れ者が職にあぶれ、祖国に帰るにも帰れず、何をすることもなくさまよい犯罪が横行する街。ある日、オイルカンパニーが、少し の衝撃でも直ぐ爆発してしまうニトログリセリンのトラック運搬の運転手を募集する。この仕事で得られる$2000を架けて4人の男がニトログリセリンを積 んだトラック2台で荒れ地を走行する。なんともいえない乾いた空気が漂う南米無法地帯の街で繰り広げられる人間模様でこの映画は始まり、映画の三分の二は トラック運搬で繰り広げられる事件そして人間描写で占められる。はっきりいってとても不思議というか変な映画だが面白い。この映画を見てていてスピルバー グの処女作「激突」を思い出した。イブ・モンタンがなんとも男臭いいい味を出している。53年度カンヌ・グランドプライズ受賞作