10 October 2007

著書: Wild Swan / A Long Way Gone

最近立て続けに人権に関する本を2冊読んだ。両方ともかなりショッキングな内容で改めて政治が安定しているという意味、そしてデモクラシーの意義を感じさせてくれた。両方とも回顧録で1冊目はシエラ・レオネの少年兵士、2冊目は中国近代史である。


「A Long Way Gone, Memoirs of a Boy Soldier」by Ishmael Beah

映画「ブラッド・ダイアモンド」でも取り上げられていた少年兵士。この著者イシュメル・ビーは12歳の時シエラ・レオネの内戦で村を焼かれ家族と離ればなれになり反政府軍ゲリラから逃げ、そして生き延びるため強制的に政府軍の少年兵士となり戦地に送られた。現在NYのアムネシティーで働く20代のイシュメルは、彼が少年兵になるまで、そして戦場、救済されてからのその後についての記録を書き留めている。

イシュメルが英語が話せるようになったのは当時友達と聞いて踊っていた音楽がRun DMCなどのアメリカ80年代後半のヒップホップの影響と書いてある処から、同じ音楽世代として「ああこの子達は歴史の本に登場する人物じゃないんだ、現在進行形なんだ」と他人事のようには思われずぐぐっと引き込まれていった。彼ら子供達が兵士としてトレーニングされる行程で、マリファナやコカインを毎日投与されそして毎晩「ランボー」を見てエキサイティングし次はこうやってランボーのように殺すんだと意気込む子供達。救出後、洗脳され殺人マシーン化された子供をリハビリする難しさなど、とにかく内容は凄まじい。このような事が実際行われているとはあまりにも悲しすぎる事実である。この著者のイシュメルはこの体験を当時12歳の少年の視点でありのままに書いている。センセーショナルという部分は題材が題材なので避けられないが、それ以上の現状を訴える強いアピールがこの著書にはある。彼は難民としてアメリカに渡り援助を受け大学を卒業し国連などでカンフェレンス・スピーカーとして何度か演説する現在に至っている。ものすごい運命と生命力を感じさせられた。



「ワイルドスワン」by ユン・チアン

私がよく遊びに行く映画評論のJTさんのブログで紹介されていて興味を持ち読み始めた一冊。91年に出版され世界各国でベストセラーになっていたそうです。清朝末期から、抗日運動、コミュニズム台頭、文化大革命、そしてその後と壮絶な時代を生きた祖母、母、そしてユン・チアンと女性3代に渡っての回顧録。祖母は貧しい家庭に育ち纏足を強いられコンキュバインとして売られた。その娘は共産党の上級役員として夫とイデオロギーに尽くすが文革で一転し強制収容所に入れられる。その娘のユン・チアンは毛沢東を絶対主義として育つが文革を通して疑問を抱くようになる。そしてイギリスへと留学するチケットを手にする。

一般的に大量殺戮というと、ヒットラーやスターリンの名前が直ぐに出て来るが、毛沢東はあまり知られていない。文化大革命で一体なにがあったのかを、その時代を生きたこのユン・チアンがクローズド・ドアの内を赤裸々に述べているが、あまりにも凄い。イデオロギーが間違えば独裁政治となり、人が自由を失いそして恐怖が集団心理をコントロールする。とてつもない世界だ。また彼女の父親のイデオロギーと個人的意志との葛藤など、彼女個人の体験、マクロの部分から書かれているので、時代が個人に与えた影響というものが強く感じる事が出来た。

現在BBCでWhy Democracyというシリーズで各国のドキュメンタリーを放送している。丁度2日前、中国本土のある小学校の8歳のクラスの学級員の選挙を追っかけたのを見る事が出来た。2人の男の子が選挙で競い合っていたが、結構笑えるものがあった。一人は現学級員、もう一人が新しくチャレンジなのだが、討論会でチャレンジャーは
「独裁者と学級員の違いはなんだ?」
学級員「?」
「君はみんなを打つだろう、それは独裁者だ!」
「みんなが言う事を聞かないから打つんだ、これは正当だ」
「違う、みんな怖いから仕方なく従うんであって、それは正当じゃない、独裁者のする事だ」
「違う、僕は独裁者じゃない」
「そうだ」
「違う」
「そうだろ、みんな」
皆賛同
「・・・」
「そうだろ!」
「じゃあ僕は正すよ、打つのは止める」
と云々。で選挙前最後の討論会で現学級員はクラスメートに「今までのささやかなお礼」と言って物を配って票集めをしていたり。(???)結果は現学級員が再当選していました。
まあこんな事20年位前の中国では考えられなかったんでしょうね。

8 comments:

JT said...

ワイルドスワン読み終えたんですね。クローズされた世界というのはこういう事が起こり易いわけで、やはり開かれた国づくりの大切さを再認識させてくれました。そして純粋培養された若者たちの恐ろしさは、まさに教育の恐ろしさをも実感させてくれたわけで、CCさんがご覧になっているBBCのドキュメンタリーシリーズのように自由に討論できるということはなかったのかもしれません。それにしても”ささやかなお礼”といって物を配るのは お国柄? なのでしょうかね(笑)

claudiacardinale said...

JTさん、勝手にリンクをはらしてもらいましたけどよかったですか?
そう読み終えました。読んでる途中一度毛沢東に虐待される悪夢を見ました。「Chairman Mao!!!!」とか言ってたのを覚えています。(ああ恐ろしや〜)
けどこんな子供の時から賄賂を考えだすというのは、多分この子将来大物かもしれません!
とにかく情報どうもありがとうございました。
謝謝

margot2005 said...

CCさん、こんばんは!
私もJTさんのところでコメント読んで「ワイルド・スワン」思い出しましたの。
かれこれ16年前なんですね?
友人が”素晴らしい本よ!”とお勧めしてくれたので、日本で発売されてすぐ読んだように思えます。
今一度読みたいところですが、既に夫が10年前の引っ越しのどさくさまぎれに古書店へ持参していたようです。哀しい...

claudiacardinale said...

マルゴ殿、奇遇ですね、うちもこの本あったらしいんですけど2年前の引っ越しの時に倉庫に持って行ってしまったらしい・・・
とはいいつつも私は全くこの本の事知りませんでした。一体何をしていたんだろう???多分アメリカでもベストセラーだったはずなんですが・・・

JT said...

シシさん、リンクの件まったくもんたいないあるよ。こちらこそいつも情報いたたいて、謝謝あるね。(え、ちょっとふざけすぎ?笑)
まじめな話、claudiacardinaleさん、リンクありがとう!

ところで、イシュメル君を読ませて頂いて、ランボーの話が出てたので気になってました。
我々は娯楽映画と割り切ってみることができますが、
出来もしない超人的な行動がかの地の少年達に刷り込まれているとは…
超ヒット作は副作用も強いということかなぁ。

Bianca said...

CCさん、私も八年くらい前に図書館から借りて読み、衝撃のあまり、理解を深めようと「アウシュビッツの少女」「天安門の六人」も読んだと日記にあります。前の二つは、まだしも若いから立ち直れたんだなと思います。それと、中国のことはまだ理性でわかりますが、独のユダヤ人迫害は、余にも不条理で到底理解の外に思えましたね。

claudiacardinale said...

次帝様(JTさん)、再次謝謝。(かなりあやしい中国語デス)


「ランボー」そうなんですよ、私もかなり疑問視しました。アル・ゴアが第一期の副大統領の頃、彼の奥さんがあまりにもひどい内容のラップミュージックの撲滅運動をしてました。青少年に悪い影響を与えると。当時は言論の自由の侵害と思ってましたが。「ランボー」が直接青少年に影響を与えるなんて状況かなり特殊だと思いますが、なんか考えさせられるものがあります。どこまでが許容範囲なのか、そして作り手の責任・・・。そういえば最近は予言者モハメド風刺漫画の騒動もあったし。複雑です。

claudiacardinale said...

ビアンカさん、お久しぶりです、新居如何ですか?
「アウシュビッツの少女」は読んだ事がなかったので先ほど外出してたので本屋で早速探しましたが生憎売り切れでした。ワシントンDCにホロコーストミュージアムというのがあるのですが、そこでの体験は貴重でした。うちの相棒は実際にアウシュビッツ記念館に行ったそうですが、その日一日中何も感じる事ができなかったそうです。まあ彼のお父さんも幼少の頃に独逸から家族全員でイギリスに逃れて来たというのもあるんでしょうね。知り合いの一部はオランダに逃れた人達もいたそうですが、「アンネの日記」と同じ運命を辿ったそうです。