4 March 2008

The Diving Bell and the Butterfly

The Diving Bell and the Butterfly by Julian Schnabel 2007 USA/France

期待していたシュナベルの新作、悲しいというかそれ以上に希望を与える美しい作品でした。原作は脳梗塞で倒れ全身不随となった仏ジャン・ドミニク・ボビー著書。彼が経験する意識障害はないが運動機能が完全に麻痺した状態の「Locked in Syndrome/封じ込め症候群」について書かれています。カンヌで最優秀監督賞、BAFTAでアダプティド脚本賞を受賞。

作家でファッション雑誌エルのエディター、ジャンドミニク(マチュー・アマルリック)、ある日病院のベッド目を覚まし体が全く動かせない、話せない事に気づき、そして出来るのは聞く事、右目を瞬きする事、そして考える、想像する事だけだった。ここからジャンドミニクの封じ込められた孤独な世界が始まる。言語療法士のアンリエット(マリ・ジョゼ・クローズ)とまばたきを使ってコミュニケーションをとる事を学んだジャンドミニクは執筆を始める。それをサポートする元パートナーのセリーヌ(エマニュエル・セリエ)と子供達。様々な人々に助けられ1997年、「The Diving Bell and the Butterfly」を書き終える。そしてその出版10日後に亡くなる。


この題材だとどうも悲しい暗い内容に思えますが、画家であるシュナベルならでは、内面の心情を美しく暖かい映像に映し出しました。ジャンクロードの視点と彼の頭の中でのイメージで構成されています。又実際に一語に2分費やし全体で約20万回の瞬きを使ってこの本を書き下ろしたという、これだけでも、どう考えても悲観的になるより希望に満ちた内容です。というとハリウッド的欺瞞な仕上がりかなと思いますが、ここはシュナベル、ちゃんとフランス人男の女好きの部分なんかも混ぜて、いい感じに仕上がっています。

元々ジャンクロード役にジョニー・デップを打診していたそうですが、「パイレーツ・オブ・カリビアン」の撮影でスケジュールがあわずマチュー・アマルリックになったそう。ジョニー・デップだと英語なのでやっぱり原作通りフランス語でマチュー・アマルリックでやったのが成功した要素の一つだと思います。でもジョニー・デップだったら一体どんな風になっていたんでしょう?

シュナベルの第一作「バスキア」はどうも頂けませんでした。私の周りに実際のバスキアを知っていた人達もかなり違う、失望したとこぼしていました。やはり実在ペインターが題材となると映像が全面に出るので演出としては相当リスキーな懸けなんでしょうね。一方作家となると人々の頭の中でのイメージ、ある意味浮遊物な様なので演出はまだしやすいのかもしれません。まあとにかく心洗われる映画でした。

4 comments:

Anonymous said...

こんばんは!
ロンドンでご覧になったのでしょうか?
監督のジュリアン・シュナーベルが、授賞式前のコメントで、オスカー監督には選ばれたけど、作品賞に選ばれなかったのはなぜ??のような発言してましたが同感であります。
ジョニーじゃなくマチューで良かったですわ。でもジョニーだったらどんなのか観てみたい気もしますね。
暗くなりがちなテーマなのにユーモアを入れて描く様はフランスですね。動くのは唯一片方の目のみでも、しっかりと女好きを表現しているフランス人てなんか憎めませんわ。
とにかく素晴らしい!作品で今年度のベストに入れたいです。

claudiacardinale said...

マルゴ嬢、ほんとそうですね。なんで監督賞にはノミネートされたけど作品賞には入ってなかったのでしょう???外国映画の部門にも入っていなかった。フランス語だけどアメリカ映画だからでしょうか?

ジョニーデップだったら、コメディー要素が強くなっていたかもしれませんね。マチューだとこのユーモアがキャラクターそのものとして捉えられるけど、ジョニーデップじゃ、もう少し社会派っぽく真面目になってしまうのか?だからユーモアも真面目に捉えられるか逆にコメディー的になってしまうか????
とにかく私も今年のベストに入れたい作品です。

Anonymous said...

時間が合わなくて(もう公開終了してしまいそう…)、まだ観てないのですが良かったみたいですね。

>内面の心情を美しく暖かい映像に映し出しました

なるほど、この辺りがこの映画の良さのようですね。
最近、ピューリッツァー賞を受賞した詩人シルヴィア・プラスの生涯を描いた「シルヴィア」を観ましたが、
自殺してしまった彼女の心情が読みきれない作品になってました。
内面の心情の描き方が優れているというのは価値ありですね。

claudiacardinale said...

JTさん、公開終了するまでにごらんになってくださいませ、JTさんの感想是非聞きたいです。

登場人物の心情が読み切れないとどうしても監督のマスターベションで終わってしまいますよね。こうなると題材として取り扱われた人物や周りの人々にとっては悲しい限りです。という事で監督というのは大変な責任の仕事ですね。