13 May 2008

Yasukuni

「靖国」 by Ying Li 2007 Japan/China

雨降る肌寒い東京から真夏と化したロンドンに到着。こちら晴天の珍しい陽気が続いています。1日に晴れ曇り雨と全ての天気に見舞われるのが通常のロンドン、一体この桃源郷のような天気いつまで続くんでしょう?で日本に滞在している間に靖国神社を題材にしたドキュメンタリー「靖国」が公開され早速見てきました。日本では色々とコントラバーシャルになっているこの作品、相当期待していたのですが・・・。

有楽町シネカノンでナイトショー1日1回きり、公開が帰国前日だったので土曜の朝、当日券を買いに行くと既にほぼ完売状態。いつもお世話になっている敏腕プロデューサーのM氏と若い監督のMちゃんの3人分を購入。そして夜、上映時間前に劇場に来るとおまわりさんが2名程いました。これは益々気分を盛り上げてくれるなぁ〜と劇場内に入るとこれまた警備員がスクリーンの前に座っている。そしてスクリーンが明るくなり始まりました。90歳の靖国の刀鍛冶職人が映し出されます。彼の黒くなった手、しわしわの顔から長年の歴史そして尊厳さが感じられます。けど李監督から質問を受けるこの職人は口をつぐんだまま。様々な感情を溜め込んでいるというより、すっかり警戒している感じ。そして終戦60年を迎えた8月15日の靖国神社。そこには軍服を来て君が代を歌い、天皇バンザイを叫ぶ元軍人達のグループ、亡くなった兄弟を偲ぶ戦没者の集会の人々、一方抗議の異を唱える反対派の若者や近隣諸国の人達などが交錯し、ここで起こる様々な人々の感情の錯綜がストレートに描かれています。小泉が参拝に来たり、戦没遺族が戦没者名簿からの除名を求めて靖国と交渉したり、プロ/コンが入り交じっています。

多分靖国を知らないビギナーの外国人が見たらいい勉強になるドキュメンタリーなんでしょうが、なんで日本国内でこの作品がこれほどまでに騒がれるのかが分かりません。多分この題材を扱うだけでも大きな試みなのかもしれませんが、それにしても内容は本当にありきたり。政府出資法人から助成金が出ているので、故意的にいい宣伝として騒がれているのでしょうか。勿論見終わった後は批評大会でしたが、あまりにもうすっぺらいのでさっさと批評も終わってしまいました。期待感が大きかったので、えっこんなもの?という喪失感が大きかったです。

小泉政権時、靖国に関しての記事は欧米でも多く見られました。やっぱり一国の首相が靖国を参拝するという事は、ヒットラーを葬った集団墓地に一国の首相がお参りするというのと同じです。ありえませんよね。政府によって一方的に一級戦犯と共に靖国に祭られた他の戦没者達はあの世でどう感じているのでしょうか。とにかく靖国に関しては人それぞれの意見がありますが、根本的には戦争という愚かな行為に対して認識する意味で重要な場所ではないでしょうか。

12 comments:

Anonymous said...

お帰りなさーい。って、同じ東京にいて遠くロンドンに戻られたのに変かな(笑)
私は、チケット完売でみられなかったのですが…、「靖国」は思ったより薄っぺらかったようですね。
なんとなくタブーな感じがして積極的に知ろうとはしませんでしたが、外から見たらどんな風に映ってるのかちょっと期待していましたので残念です。
こちらは早くも台風2号が房総半島沖をかすって行きましたが、今日も肌寒かったですよ~

claudiacardinale said...

ただいま〜JTさん。JTさんらしき人物と遭遇しないかなとシネカノンできょろきょろしておりましたが、観客の殆どはお年をめした方々でした。JTさんはまだまだお若いですものね。
そう、「靖国」期待はずれでした。けどチャンスがあったら8月15日には靖国に行って、どうなっているのか自分の目でみたいです。
日本はもう台風の季節なんですね、えっそれちょっと早すぎませんか?なんか世界的に変な気候です。Co2を出さない様に生活しなければ!!

Anonymous said...

ccさん、これは素敵な画像ですね。でもぎりぎりセーフで切符を手に入れて、ずっと前から期待してご覧になった割には、失望なさっているのですね。あまり製作者・出演者らの、はっきりした主張が感じられない映画になっているんでしょうか?
ところで地理の関係で当分見られない私はつい最近「キネマ旬報」で4月の抗議集会の発言を読んだら、結構面白く感じました。先ず「週刊新潮」のこれは「反日」映画だという記事が去年の秋に出て、その言葉に国会議員だか、右翼だかが騒ぎ出したようです。早呑込みで騒ぎ立てたんだなあと感じました。李さんは在日19年、反日であるはずが無いのにね。でもやはりccさんと中国系は反りが合わなかったのかな?

claudiacardinale said...

Biancaさん、こんにちわ。
そうなんです、私も一体何を期待していたかと言われると、ちょっと分からないんですけど、そうですねぇ、「硫黄島からの手紙」で見たような新しい部分、日本人兵が「こんな島なんてアメ公にくれてやる」っと言っていたような外国人だから出来たという部分でしょうか。
どちらかというと、撮ったのをそのまま見せているだけで李監督が反日という感じは全く伝わってきませんでした。たぶん騒ぎ立てている人達は、最後の南京での写真映像を色々と見せている部分に「反日」と騒ぎ立てているんでしょうね。まあこの最後の写真モンタージュの部分はドキュメンタリーの手法において安易な見せ方だと感じましたけど。
それにしても「中国系は反りが合わなかったのかな?」私がこのブログで中国の監督の作品をよくけちょんけちょんに言っているのを覚えていらっしゃいます!こう考えると私って中国系の感性と合わないもあるんでしょうかね???けど好きな監督もいますよ。
ではビアンカさん、見た暁には感想お待ちしております。

Anonymous said...

またまたお邪魔しまっす。今日は靖国神社に行ってきました。
といっても近くまで行ったので立ち寄っただけですけど… 
いつきても巨大な一の鳥居には圧倒されます。
明治神宮が都会の中の巨大な杜とすれば(あのすばらしい杜は大好きです)、
九段坂を登ってゆくからかもしれませんが、靖国は国家の宗教施設という感じがして威圧感がありますね。
結構中国人の観光客も見かけますよ。
そうそう、私はCCさんと同じぐらいの世代だと思ってるんですけど(あくまでも記事からうける感覚的なものですが 汗)
シネカノンいまだに行けてませんです。ハイ。

claudiacardinale said...

JTさん、いらっしゃいませ。私実は靖国神社に足を踏み入れた事がないのです。帰国当日朝靖国神社で骨董市のでかいのがあったのでこれを機会にと思いながら結局寝坊してしまいました。やっぱり威圧感があるんですねぇ。一度8月15日でも行こうかしら。でも中国人観光客が多いというのはとっても意外です。なんでなんでしょう???

では私と同世代のJTさん、(そうしておきましょう、笑)同世代の感想お待ちしてますよ〜。

Anonymous said...

地元にいたのに、未踏ですか?自慢ではありませんが、わたし4~5回行ってます。飯田橋やお茶の水に用があるときなど一寸寄り道して、何しろヒマじんなもので。地勢的には坂の上なので行きづらい場所ではありますね。靖国神社と名前が変わる前は、「招魂社」といって、住民に親しみのある場所でした。「吾輩は猫である」にも、クシャミ先生の幼い娘が、「招魂社にお嫁に行きたいんだけど、水道橋を渡るのがイヤだからどうしようかと思ってるの」と可愛いことを言う所があります。すると2人の妹達が、「わたしも」と口々に、招魂社にお嫁に行くことになるのです。以上、ちょっと雑学的知識でした。

Anonymous said...

私も、映画としてそこまで凄いわけではない、という風に聞いています。日本では、見ないのに批判はだめだ、とか右翼の方が上映会もしてましたよ。

本当に、小泉の靖国参拝はアジアでは特に批判の的でしたね・・・私も「ありえない」派でしたが、当時は学生の間でも「参拝なんてありえない」とは言えない雰囲気がありました(福岡では)、なんか世間が右よりな風潮になって・・・

中国の作品があまり合わないそうですが、Edward Yangはいかがですか?

claudiacardinale said...

さすがビアンカさん、さらっとこういう知識が出て来る。ビアンカのこういう処私とっても好きです、ハイ。そうですか、「招魂社」って庶民に親しみがあったんですね。今ではちょっと考えられない・・・でも漱石ってことは明治維新辺り。ちょっといま調べたら靖国は戊辰戦争頃からと結構新しいんですね。

claudiacardinale said...

j'adoreletheさん、こんにちわ。「中国の作品があまり合わない」というか、好きな作品があまりないというか、という事はあまり合わないのでしょうか??というか見る機会にあまり恵まれていないというか。アン・リー監督は好きですよ、とはいいつつ彼は台湾ですね。Edward Yangの作品は多分見ていないような・・・。なにかお勧めありましたら是非!

Anonymous said...

はじめまして。
JTさんの「靖国」から参りました。
クラウディア・カルディナーレお好きなんですね?ちょっと怒ったような顔のコケティッシュなイタリア女優さんでしたね。
「靖国」は10年かけてこれ?10年かけて御神体を間違うの?でしたが、逆に反日感情を表に出さないで靖国刀を軸に巧みにある方向へと導く意図を感じました。
戦前の靖国(招魂社)はサーカスや競馬、相撲など庶民の憩いの場だったとか。
戦争の軍国主義のシンボルのような存在になってしまって残念です。何とか解決できないんでしょうか?

claudiacardinale said...

ryokoさん、こちらこそはじめまして。そうです、CCを筆頭にイタリア女優大好きです!+マルチェロも大好きです。

靖国って戦前は庶民的な場所だったらしいですね。今では全世界が注目する場所となってしまいました。日本という国の側面を象徴するのでこれもありかしらとも思ってしまいます。まあ国家レベルという辺りが頂けませんが。そうですねぇ、おっしゃる通り、もう少しなんとかなればいいんですけどね。