10 October 2019

Cold Case Hammarskjold / コールド・ケース・ハマーショルド

by Mads Brugger 2019 Sweden

ドキュメンタリー映画好きで数多く見ているが、この作品はクリエイティブに作られ楽しめる一方あまりにも衝撃的な内容と、素晴らし出来であった。ハマーショルドは第二代国連総長で1961年9月にアフリカのローデシア、現在のザンビア上空で飛行機事故により亡くなった。出身国スェーデンでは暗殺陰謀説が根強く、スウェーデン人独立調査官のGöran Björkdahlとデンマーク人ジャーナリストMads Brüggerの2人はこのミステリーを7年かけて調査。ハマーショルドの乗った飛行機はベルギー人パイロットによって撃墜された証拠を見つけ、そしてSouth African Institute for Maritime Research (SAIMR)、南アフリカの準軍事組織へと辿り着く。当時アフリカでは多くの国が脱植民地運動を経て独立したが、豊かな資源の利益をキープしたい元支配国の企業、冷戦、そしてアパルトヘイトと各国の思惑が渦巻き、アフリカ大陸の白人至上主義を遂行する事を目的としてSAIMRが密かに作られた。この組織によって、アフリカの独立した国々をサポートするハマーショルドは邪魔な存在であるが為に暗殺され、各国のクーデターに関与し、またアパルトヘイト後年期アフリカ大陸で白人をマジョリティーとする為にHIVウイルスを混ぜたワクチンをアフリカの多くの国々で無料接種行った事実が元SAIMR諜報員の証言によって明らかにされた。
上映後プロデューサーとの質疑で、この元SAIMR諜報員の妻は黒人で子供もおり長年このギャップに身を引き裂かれる思いから取材に応じ、またこの取材後に南アフリカから亡命したという。丁度昨日UN調査機関でこの墜落事故の調査を再開するという報告書が出され、この元SAIMR諜報員も協力しているという。
このようなショッキングな内容ながらも、前半調査を行っている過程は当時を再現したように、サファリスーツとハンティング帽を被って墜落現場を金属探知機とショベルを使って証拠をほり出そうとしたり、当時ハマーショルドが泊まっていたコンゴのホテルで白いサファリスーツの上下を着ながら監督のMadsは取材経緯を黒人女性の秘書2人に調査の工程をタイプさせたりと前半は笑える要素が多い。そして作品が進むにつれ内容は重くシリアスになっていくというかなり面白いドキュメンタリーであった。今年のサンダンスでドキュメンタリー賞を受賞している。

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