9 February 2010

Precious

Precious by Lee Daniels 2009 USA

今シーズン一番期待していた作品「Precious : Based on the Novel Push by Sapphire」。なぜここまで期待していたかというと、原作でもあるサファイア著書「Push」があまりにもショッキングで過酷な内容ながらも、どこかピカッとひかる希望の光が感じられる素晴らしい作品だったので、どう映像化したのかとても興味があったからです。またこの時期の賞レースでもベスト・ピクチャーを初め各部門でノミネートや受賞しているのでこれに拍車をかけた具合。見終わった感想はというと、期待を裏切らない出来でした。



1987年NYハーレムに住む16歳のクラリス・プレシャス・ジョーンズ(ガブレー・シディベ)。肥満、読み書きが出来ず、母親マリー(モニーク)からは虐待を受ける毎日。そして実の父親からも性的虐待を受け過去に一人子供を産み、また妊娠する。この過酷な状況下で生きるプレシャスが特別学校で教師ミス・レイン(ポーラ・パットン)に出会い、読み書きを通し自尊心を高め生きる希望を見つけて行く。

この原作を上手く映像にアダプトしていました。脚本はサファイア自身と新人のジェフリー・フレッチャー。このプレシャスを演じたガブレー・シディベそして母親マリーを演じたモニークの2人はなかなかです。特にモニークは迫力の演技でした。看護士でレニー・クラビッツ、ソーシャルワーカーですっぴんのマライア・キャリーが出演しています。個人的にマライアも好演でした。プロデューサーに有名なTVショー「オファラ・ウィンフリー・ショー」に出演/プロデュースしているオファラ・ウィンフリーの名前もありました。

原作では物語を語るプレシャスの文章力そのままで書いてあり、初めは無茶苦茶な文法そしてスペリングですが、時間が経つにつれ徐々に文章力が向上していきます。一方無茶苦茶な文法/スペリングでも心情を素直に語る彼女の話にぐいぐいと引き込まれていった覚えがあります。以前NYに住んでいた頃、約6〜7年前程に幼児虐待についてのドキュメンタリー製作に関わった事があります。ハーレムを中心として活動を行なうソシャルワーカーに同行取材し数件自宅訪問をしたのですが、その内一軒は今でも鮮明に覚えています。ソーシャルワーカーの人から「ここは凄いからね」と忠告され入ったアパート。「プレシャス」となんとなく似ていて、ハーレムにある典型的なうす暗い巨大アパートの中に入るとフライドチキンの匂いがし、奥の部屋に6ヶ月の赤ちゃんとそのティーンエイジのお母さんがいて(何を食べさせているのか?巨大な赤ちゃんでした。ソーダを哺乳瓶から飲ませているのを見たソーシャルワーカーはミルクかお水に切り替えなさいと彼女に忠告していたのですが)、その横にある部屋では巨体の、ティーンのお母さんの母親がベッドに横たわりながらTVを見ていて、取材をしているといつのまにか他の部屋から子供数人が出て来て(学校にいる時間では??)、そして!!という格好をした14〜15歳の女の子が出て来てと、凄かったです。この作品と同じ頃の80年代のハーレムもよく覚えてますが、勿論一人で行った事はありません。ジャズやゴスペルなど聞きに行く時は必ず黒人の友達と出向いたものです。それでも目抜き通り以外を歩くのは避けていた状態でした。勿論ハーレムには素晴らしいカルチャーが沢山あるのですが、治安はやはり・・・でした。今は相当良くなってますが。

とにかくこの様な過酷な状況で生きて行くプレシャスの16歳というまだ子供で未熟でありながらも力強さがとても感じられるいい作品です。お勧めです。

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