22 November 2012

Amour

Amour by Michael Haneke 2012 France Austria Germany

ミヒャエル・ハネケの新作、今年度カンヌ、パルムドール受賞作「アムール」を見た。不必要な部分は全く描かれてなく、日常をそのまま追った手法で、ごく普通な人生の一過程として、誰も避ける事が出来ない題材、老い/介護/尊厳を描いた。パルムドール受賞にふさわしく、傑作であり、この作品が主題とする現実に面と向かい合わされた。

ジャン=ルイ・トランティニャン演ずるジョージとエマニュエル・リヴァ演じるアナの老夫妻の普通の生活。脳卒中で右半身不随となり老いて行く妻を最後まで介護し続けるジョージ、行き着く所をそれとなく悟りながらも老いには抵抗できないアナ、そして何も出来ない娘、イザベル・ユペール演じるエマ。この作品を見ながらエマと自分を重ねてしまう。観客だれもがこの作品のどこかに自分を重ねる事が出来るのだろう。老人人口が増大するこれから先、家族制度が崩れた社会で老後をどう生きるか、いかに対応した社会を整えて行くかは日本やイギリスに限らず先進国の多くが抱える大きな課題だ。

ジャン=ルイ・トランティニャンは「男と女」、エマニュエル・リヴァは「Hiroshima mon amour/24時間の情事」とあまりにも有名な作品の中での若い頃の姿が焼き付いている。80歳を越えたこの2人からは人間の尊厳というものが感じられる。これはキャスティングの功であり、また両者の素晴らしい演技でもあろう。

この困難な題材を真っ向から描いた、勇気ある作品だと思う。

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