30 August 2017

Mimosas / ミモザ

by Oliver Laxe 2016 Morocco

2016年カンヌの批評家週間グランプリ受賞作品。異なる2つの世界が、イスラム教礼拝単位ラカートの位置をタイトルとした3部構成で描かれている。

モロッコのローカルタクシー会社でメカニックとして働くシャキブ、長老の旅を任されアトラス山脈へとタクシーを走らす。もう一つの世界は時代が下ったアトラス山脈。年老いた長老シェイクは終の住処シジルマサへ急ぐ為、決死のアトラス山脈越えを率いるキャラバンに要求るすが途中死んでしまう。このキャラバンに紛れ込んでいた悪漢アーメッドとサイードは長老シェイクの死体をシジルマサに運ぶ事を報酬と引き換えに約束し、残りのキャラバンは引き返して行く。何処からともなく現れたシャキブはこの2人の旅に加わる。

この作品の見所はロケーションの凄さ。雄大なアトラス山脈と果てしなく続く土砂漠の映像があるからこそ、シンプルで幻覚的な話しが生きてくる。話しは映像を主体にゆっくりと語られる。土砂漠とアトラス山脈の世界は静寂に包まれ、時たま聞こえるのは最低限の会話、たき火の音、ほぞぼそと聞こえる歌声、川の流れ、馬の蹄の響きにライフル音だけだ。

深い渓谷の岩肌に沿った細道をキャラバンが下りるシーンがあるのだが、こんなところに細道を作る人間の凄さに驚嘆してしまった。十数年前にアトラス山脈を車で越えた事があるのだが、その美しさとスケールに圧巻されたが、あまりの険しさに今までドライブした中で一番怖い思いをしたルートでもあった。昔はこの山脈を実際に歩いて越えていたとは、人間のサバイバル精神とは凄いものだ。

監督のオリヴェル・ラセを調べてみると、スペイン・ガリシア移民の両親を持つフランス生まれ。2010年にモロッコのタンジェの社会的に差別されている子供達の生活を描いたドキュメンタリー「You All Are Captains」で国際映画批評家連盟FIPRESCI を受賞していた。

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