25 January 2018

Mudbound / マッドバウンド 哀しき友情

by Dee Rees 2017 USA

今年度アカデミー賞で脚本賞、助演女優賞、撮影賞、主題歌賞でノミネートされている「マッドバウンド 哀しき友情」、ある意味現在の社会の流れを象徴しているかのような作品である。監督そして脚本は黒人女性でレズビアンを公言しているディー・リース、助演女優と主題歌は黒人シンガーのメアリーJブライジ、そして撮影監督賞初の女性ノミニーであるレイチェル・モリソン。配給はネットフレックス。40〜50年代ジム・クロウ制度が平然と存在するアメリカ南部ミシシッピーが舞台である。

ミシシッピー田舎にあるコットン農場、照りつける太陽、そして容赦無く降る雨と、大地はいつも泥だらけで環境は厳しい。大家の白人家族ヘンリー(ジェイソン・クラーク)と妻ローラ(キャリー・ミリガン)そしてヘンリーの父で人種差別主義のパピー(ジョナサン・バンクス)、ヘンリーの弟でパイロットとして第二次世界大戦で戦っていたジェイミー(ギャレット・ヘドランド)、一方ヘンリーの農場で働く黒人一家の長ハプ(ロブ・モーガン)と妻フローレンス(メアリーJブライジ)そして息子で戦車隊の隊長を勤めたロンゼル(ジェイソン・ミッチェル)、この2つの家族の関係が描かれている。

厳しい環境そして人種差別で過酷で虐げられた黒人一家の生活がしみじみと伝わってくる。また運命に逆らえない惨めな人生を営む白人一家も描かれている。それにしても人種差別が公然と約50年前まで行われていたとはヘドがでる思いだ。第一次、二次世界大戦中アメリカ軍には第92歩兵師団があり黒人はこの団に所属していた。また第二次世界大戦ではTuskegee Airmen、タスキーギエアメンと呼ばれる黒人戦闘機部隊が活躍した。大戦から帰還し立ち寄った地元の食料品店の表玄関から出ようとしたロンゼルを阻んだパピーと白人男性仲間が「お前は軍で白人と同じように戦ったらしいがここはミシシッピーだ、裏口から出ろ」と言ったこの一言がこの不条理を言い表していた。ひどい話だ。

エアリーJブライジが演じた、厳しい環境生活の中でもずっしりと見守る母フローレンスが印象的だった。

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