27 July 2017

Goodbye Aleppo / グッバイ・アレッポ

by Christine Garabedian, 
   Mahmoud Ali Hamad 
     2017 UK

シリア・アレッポに在住する4人の一般人ジャーナリストによるドキュメンタリー。20代前半の若いジャーナリストMojahed、Basim、Ahmad、Sirajの4人は、モバイル電話ビデオとサテライト・インターネットを使い、2016年12月西アレッポの一般市民総撤退までの西アレッポの状況と彼らの生活をドキュメントした。


映像から見るアレッポは想像以上に荒れ果てがれきの山。既に民間防衛団のホワイト・ヘルメットもいないこの街でまだ市民は暮らし続けている。映像の背後には途切れなく爆発音や銃声が響く。道では子供達が遊んでいる姿も見られるが、話しを聞くと「外は怖いけど家の中は退屈」と話す。またある少女は「昨晩隣に塩素爆弾が落ちて、息をしようと思ったけど、息が出来なかった、怖かった」と話す。今欲しいものはなに?との質問に「かわいいリンゴ」と無邪気に蔓延の笑みを浮かべて答える。ジャーナリストの一人Basimは自分は独身だから自由に動けるからこれが独身の楽さとジョーダンを交えて話す。爆弾音が響く中、香草をふりかけたパンをかじりながら「美味しいんだ、けど爆弾音でビックリしてたまに喉につっかえる」とふざけて言う。またジャーナリストの一人は別れ別れになった妻となんとかネットでチャットしようとしている。彼らのオフィスの地域の戦闘が激しくなって来た時、地下に移動しようと他のメンバーに切実に訴えながらかぶったヘルメットのベルトがうまくハマらず何度もヘルメットのベルトをつけ直す姿。彼らの映像は切迫しあまりにもリアルだが、その状況の中での人間の生活を写し出している。12月末、西アレッポは政府軍に占領され市民は撤退命令を受け、一緒に撤退するこの4人。生まれ育った自宅の前で「グッバイ・アレッポ」という姿がとても印象的であった。
彼らが十代中頃で始まったこの内戦、たった6年後、現在20代前半になった彼らのあまりにもの成熟ぶりに過酷な状況で育つという事の現実を見せつけられた。全く手を打つ事ができないこのシリアの状況はあまりにも心苦しい。

2 comments:

Bianca said...

CCさん、お久しぶりです。
このところCCさんは欧州の高級感が溢れるオペラの記事が
多いなあと思っていましたが、きょうはそれと対照的な
ドキュメンタリーですね。
懐かしいアレッポという名前に惹きつけられました。
過酷な現実に急速に大人になっていく彼らーー
もともとシリアの人達は早く成熟するなあと思っては
いましたがーー皮肉にもそういう状況だからこそ
いい映画が撮れるのかもと思いますね。
戦後の日本と、現在の日本映画の状況を比べても
そういう感じが強いです。

claudiacardinale said...

ビアンカさん、こちらこそお久しぶりです!久々にコメント頂いて嬉しいです。そうですね、最近オペラ記事がおおくなっているような・・・。この「グッバイ・アレッポ」の試写会でプロデューサーの質疑があったのですが聞き応えがありました。この若者達の力強さには感嘆でした。たしかに混乱している時勢のほうが通常の域を越えたものが出て来やすいですね。