by Ron Howard 2019 USA
キング・オブ・ハイCで知られるオペラ歌手ルチアーノ・パパロッティ、映画監督のロン・ハワードがバイオグラフィー・ドキュメンタリーを制作。カラフルなキャラクターで知られるパパロッティをロン・ハワードが描くとなるとこれは面白くないはずがない、という先入観で見たが期待は全く裏切られなかった。イタリアのパン屋でアマチュア・テノール歌手の父を持ち、幼少時にはサッカー選手を夢見ていたが、母親の勧めで学校の先生となるが、音楽コンクールで優勝、その後「ラ・ボエーム」のロドルフォ役でデビューして以来着実にキャリアを築く、またオペラ以外でもロック歌手とのコラボなど幅広く活躍した。このドキュメンタリーではオペラ歌手としてのパパロッティ、家族、マネージメント、ビジネスなども取材し興味深い。しかしながらやはりパパロッティ自身のチャーミンな性格とユーモアがとてもいい、どんな苦境の場面でもパパロッティ節で切り抜けていく、見ている者を暖かく安心させてくれる感がある。まあ恰幅のいい体と人を安心させる顔つきそしてイタリア的愛嬌のある性格の要素が大きいのだろう。
メトロポリタン・オペラ・ハウスで何度かパパロッティの舞台を見たことがあるが、今ではあの貫禄のある姿を映像でしか見れないのはなんとも寂しいものだ。年老いた私の母親は東京ドームで見た三大テノールを今でも時々思い出しては話している。まあ彼女の場合はホセ・カレーラス狙いだったのだが。。この母にこの作品のDVDをプレゼントしようと思い探したが残念ながら英語版しか出てないようだ。
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22 February 2020
7 December 2019
The Cave / ザ・ケイブ
by Feras Fayad 2019 Denmark, Syria
シリアの民間活動を行うホワイト・ヘルメットを追ったドキュメンタリー「アレッポ 最後の男たち」の監督フェラス・ファヤードの最新作。シリアのグータにある地下病院の責任者であり若い女性医師のアマニとそのスタッフを2016年から2018年の間追ったドキュメンタリー。グータの街は破壊尽くされているがそれでもまだロシアの爆撃機の攻撃を受け続け人々は地下に要塞を作り生き延びている。そこにある7つの病院の一つは女性医師によって運営されている。毎日大量の死傷者が運ばれまた上空からロシア爆撃機が飛行する爆音が響く。そして次第に病院もその爆撃の標的となり始める。
オープニングのシーンで、山脈を背景にしたグータの街のスカイラインが大画面に映し出される。そして爆撃機の爆音と共に次から次へと街に爆弾が落とされる。また廃墟と化した街中、病院内で爆音に怯えるスタッフたちの姿が映し出される。まるで第二次世界大戦のフィクション映画でみるセットのようだが恐ろしいことにこれは現実の世界の姿である。またあるシーンで女性スタッフが大量に運び込まれる患者をみて「誰も怪我をしていないのに皆死んでいく」と叫ぶ。そこには化学兵器で苦しむ人々の姿があり、そして病院のスタッフもマスクをしながら懸命に応急処置に当たる。あまりにも残酷だ。
この作品上映後の質疑で、ファヤード監督は内戦シリアの状態だけではなくシリア社会で置かれている女性の立場をフォーカスしたかったと述べていた。はじめ7つの病院で撮影を始めその途中でアマニ医師と出会い彼女にフォーカスすることを決めたという。内戦の状況下で現場で医師として活動をするだけでなく、そのシリアに置ける女性への偏見とも戦う女性スタッフ達、彼女達の試練は想像を絶するものである。全撮影フッテージは1000時間に及ぶという。編集段階でエディターがトラウマに陥りスタッフ全員はセラピーにかかりながら作業を進めたそうだ。監督は多くの人に見てもらうことにこの作品の意味があると言っていたがまさしくその通り。数日たった今でも様々なシーンが脳裏に鮮明に焼き付いてる。
シリアの民間活動を行うホワイト・ヘルメットを追ったドキュメンタリー「アレッポ 最後の男たち」の監督フェラス・ファヤードの最新作。シリアのグータにある地下病院の責任者であり若い女性医師のアマニとそのスタッフを2016年から2018年の間追ったドキュメンタリー。グータの街は破壊尽くされているがそれでもまだロシアの爆撃機の攻撃を受け続け人々は地下に要塞を作り生き延びている。そこにある7つの病院の一つは女性医師によって運営されている。毎日大量の死傷者が運ばれまた上空からロシア爆撃機が飛行する爆音が響く。そして次第に病院もその爆撃の標的となり始める。
オープニングのシーンで、山脈を背景にしたグータの街のスカイラインが大画面に映し出される。そして爆撃機の爆音と共に次から次へと街に爆弾が落とされる。また廃墟と化した街中、病院内で爆音に怯えるスタッフたちの姿が映し出される。まるで第二次世界大戦のフィクション映画でみるセットのようだが恐ろしいことにこれは現実の世界の姿である。またあるシーンで女性スタッフが大量に運び込まれる患者をみて「誰も怪我をしていないのに皆死んでいく」と叫ぶ。そこには化学兵器で苦しむ人々の姿があり、そして病院のスタッフもマスクをしながら懸命に応急処置に当たる。あまりにも残酷だ。
この作品上映後の質疑で、ファヤード監督は内戦シリアの状態だけではなくシリア社会で置かれている女性の立場をフォーカスしたかったと述べていた。はじめ7つの病院で撮影を始めその途中でアマニ医師と出会い彼女にフォーカスすることを決めたという。内戦の状況下で現場で医師として活動をするだけでなく、そのシリアに置ける女性への偏見とも戦う女性スタッフ達、彼女達の試練は想像を絶するものである。全撮影フッテージは1000時間に及ぶという。編集段階でエディターがトラウマに陥りスタッフ全員はセラピーにかかりながら作業を進めたそうだ。監督は多くの人に見てもらうことにこの作品の意味があると言っていたがまさしくその通り。数日たった今でも様々なシーンが脳裏に鮮明に焼き付いてる。
24 August 2017
An Inconvenient Sequel : Truth to Power / 不都合な事実2:放置された地球

2006年に公開された「不都合な真実」の続編。元米国副大統領アル・ゴアがプロデューサー、出演した前編では、当時既に後には一歩も引けない状態となった温暖化についてデーターと実例を交えながら警告的に語ったドキュメンタリーであった。このドキュメンタリーは大きな反響を呼び、反対派はでっち上げのデーターと多くの反論も出た。あれから約10年、現在温暖化の影響は全世界で顕著に現れ、トランプ政権を除いては各国が認める人類が危機に瀕する事態となっている。この続編では、過去10年での経緯、そして全世界の合意を取り付けたパリ協定までの道のりを描いている。
前半は、主にアル・ゴア自身について多く語られ、後半はパリ協定での攻防を描いている。アル・ゴアの生い立ち、長年環境問題に取り組んで来た政治活動、彼が全世界で主催する温暖化ワークショップにフォーカスしと、もしかしたら2020年の米大統領選に出るのかと思ってしまう程。アル・ゴアはインフォーメーション・スーパーハイウェイ構想など先見の明に優れており好きな政治家なので大歓迎だが、次期大統領選は若手の活躍を期待したい処もある。後半のパリ協定では、反対声明を出すインドのコンセンサスを取り付けるために奔放する各国代表団とアル・ゴア、そして画期的な合意の瞬間を描いている。
ドキュメンタリーとしては、前回とは全く比べ物にならないインパクトが薄い内容だったが、温暖化への取り組みへの行方を理解するには見て正解な作品であった。この日の上映前に、ツイッターを用いてイギリスとアイルランド全土からの質問に対するアル・ゴア氏との質疑がロンドンからサテライト中継を通じて行なわれた。この質疑には全く関係ないが、テネシー州出身のアル・ゴア氏のスーツにカウボーイ・ブーツという出で立ちに生粋の政治家という印象を受けた。
27 July 2017
Goodbye Aleppo / グッバイ・アレッポ
by Christine Garabedian,
Mahmoud Ali Hamad
2017 UK
シリア・アレッポに在住する4人の一般人ジャーナリストによるドキュメンタリー。20代前半の若いジャーナリストMojahed、Basim、Ahmad、Sirajの4人は、モバイル電話ビデオとサテライト・インターネットを使い、2016年12月西アレッポの一般市民総撤退までの西アレッポの状況と彼らの生活をドキュメントした。
映像から見るアレッポは想像以上に荒れ果てがれきの山。既に民間防衛団のホワイト・ヘルメットもいないこの街でまだ市民は暮らし続けている。映像の背後には途切れなく爆発音や銃声が響く。道では子供達が遊んでいる姿も見られるが、話しを聞くと「外は怖いけど家の中は退屈」と話す。またある少女は「昨晩隣に塩素爆弾が落ちて、息をしようと思ったけど、息が出来なかった、怖かった」と話す。今欲しいものはなに?との質問に「かわいいリンゴ」と無邪気に蔓延の笑みを浮かべて答える。ジャーナリストの一人Basimは自分は独身だから自由に動けるからこれが独身の楽さとジョーダンを交えて話す。爆弾音が響く中、香草をふりかけたパンをかじりながら「美味しいんだ、けど爆弾音でビックリしてたまに喉につっかえる」とふざけて言う。またジャーナリストの一人は別れ別れになった妻となんとかネットでチャットしようとしている。彼らのオフィスの地域の戦闘が激しくなって来た時、地下に移動しようと他のメンバーに切実に訴えながらかぶったヘルメットのベルトがうまくハマらず何度もヘルメットのベルトをつけ直す姿。彼らの映像は切迫しあまりにもリアルだが、その状況の中での人間の生活を写し出している。12月末、西アレッポは政府軍に占領され市民は撤退命令を受け、一緒に撤退するこの4人。生まれ育った自宅の前で「グッバイ・アレッポ」という姿がとても印象的であった。
彼らが十代中頃で始まったこの内戦、たった6年後、現在20代前半になった彼らのあまりにもの成熟ぶりに過酷な状況で育つという事の現実を見せつけられた。全く手を打つ事ができないこのシリアの状況はあまりにも心苦しい。
Mahmoud Ali Hamad
2017 UK
シリア・アレッポに在住する4人の一般人ジャーナリストによるドキュメンタリー。20代前半の若いジャーナリストMojahed、Basim、Ahmad、Sirajの4人は、モバイル電話ビデオとサテライト・インターネットを使い、2016年12月西アレッポの一般市民総撤退までの西アレッポの状況と彼らの生活をドキュメントした。
映像から見るアレッポは想像以上に荒れ果てがれきの山。既に民間防衛団のホワイト・ヘルメットもいないこの街でまだ市民は暮らし続けている。映像の背後には途切れなく爆発音や銃声が響く。道では子供達が遊んでいる姿も見られるが、話しを聞くと「外は怖いけど家の中は退屈」と話す。またある少女は「昨晩隣に塩素爆弾が落ちて、息をしようと思ったけど、息が出来なかった、怖かった」と話す。今欲しいものはなに?との質問に「かわいいリンゴ」と無邪気に蔓延の笑みを浮かべて答える。ジャーナリストの一人Basimは自分は独身だから自由に動けるからこれが独身の楽さとジョーダンを交えて話す。爆弾音が響く中、香草をふりかけたパンをかじりながら「美味しいんだ、けど爆弾音でビックリしてたまに喉につっかえる」とふざけて言う。またジャーナリストの一人は別れ別れになった妻となんとかネットでチャットしようとしている。彼らのオフィスの地域の戦闘が激しくなって来た時、地下に移動しようと他のメンバーに切実に訴えながらかぶったヘルメットのベルトがうまくハマらず何度もヘルメットのベルトをつけ直す姿。彼らの映像は切迫しあまりにもリアルだが、その状況の中での人間の生活を写し出している。12月末、西アレッポは政府軍に占領され市民は撤退命令を受け、一緒に撤退するこの4人。生まれ育った自宅の前で「グッバイ・アレッポ」という姿がとても印象的であった。
彼らが十代中頃で始まったこの内戦、たった6年後、現在20代前半になった彼らのあまりにもの成熟ぶりに過酷な状況で育つという事の現実を見せつけられた。全く手を打つ事ができないこのシリアの状況はあまりにも心苦しい。
5 February 2017
Bitter Lake / ビター・レイク

ドキュメンタリー映画「ビターレイク」、ビターレイクとはエジプトのグレート・ビター湖であり、スエズ運河を挟んで地中海と紅海を結ぶ。イギリス人ドキュメンタリー監督アダム・カーティスがBBCにある素材を用いて、アメリカ、イギリス、ソ連、サウジアラビア、そしてアフガニスタンを過去30年に渡って描いている。50年代近代化を目指すアフガニスタンのインフラに着手するアメリカ、78年4月革命、冷戦、ソ連アフガン侵攻、イラン/イラク戦争、タリバン、9.11、イラク侵攻、イスラム国まで追っている。このドキュメンタリーの核は、各政府の思惑と陰謀そして西洋社会がイスラム過激派を善悪で簡素化説明した事により政府自体これから何が起こりえるのかが見えない闇の状態を生み出し、また何が起きてるのかが分からなくなっている現状にあるという事である。
この歴史を社会の流れと対象させ、またモザイクの様に映像素材を斬新に編集した。これによりダークにとても強烈な今までにないスタイルで、私の中に大きく影響を残した、とても興味深い作品となった。彼のもう一つの作品、「Super Normarization」も続けてみるつもりだ。
22 April 2016
Watchers of the Sky
by Edet Belzberg 2014 USA
サンダンス映画祭そしてエルサレム映画祭にてベスト・ドキュメンタリー受賞作品。ジェノサイド/大量虐殺という言葉を作り出し、また1948年に国連で採択されたジェノサイド条約の尽力者であるポーランド・ユダヤ人法律家のラファエル・レムキンの話しをベースに戦争と人道に対する罪に関する内容である。

この作品ではラファエル・レムキンの他、米国国連大使のサマンサ・サマーズ、ニュルンベルク継続裁判の一つアインザッツベルッペン裁判検察官を努め現在国際刑事裁判所のアドボケーターとして活動するベンジャミン・フェレンチ、スーダン大統領アル・バシールのダフール紛争/民族浄化に対する責任を追求する国際刑事裁判所のルイス・モレノ・オカンポ検察官、ダフール紛争UN難民キャンプの責任者ルワンダ人のエマニュエル・ウォルクンドにも話しは及ぶ。
多くの家族をホロコーストで失ったレムキンが傍聴したニュルンベルク裁判では、ナチは平和を脅かし国際社会に甚大な損傷を与えたという戦争犯罪がベースになっており、このためユダヤ人大量虐殺/ホロコーストなど人道に対する罪は後ドイツ国内の裁判で行なうべきとアメリカやイギリスが反対したが、戦争犯罪に関連するという意味で含まれた。国内で起った事は国際社会は無視していいのか、将来虐殺の抑止を定める国際条約が必要とレムキンは危機感を覚え尽力的に活動を行なう事となった。
レムキンをはじめ、登場する人々には献身的活動を駆り立てる背景がある。この作品ではその彼らが経験した紛争/虐殺を歴史的に検証し、現在でも途絶えないこの人道に対する罪への裁きを伝えている。この作品ではプロットが明確にまとめられ、またヒューマニティーという根底を深く掘り下げる事によって、見終わった後深く考えさせられるものがあった。
多くの家族をホロコーストで失ったレムキンが傍聴したニュルンベルク裁判では、ナチは平和を脅かし国際社会に甚大な損傷を与えたという戦争犯罪がベースになっており、このためユダヤ人大量虐殺/ホロコーストなど人道に対する罪は後ドイツ国内の裁判で行なうべきとアメリカやイギリスが反対したが、戦争犯罪に関連するという意味で含まれた。国内で起った事は国際社会は無視していいのか、将来虐殺の抑止を定める国際条約が必要とレムキンは危機感を覚え尽力的に活動を行なう事となった。
レムキンをはじめ、登場する人々には献身的活動を駆り立てる背景がある。この作品ではその彼らが経験した紛争/虐殺を歴史的に検証し、現在でも途絶えないこの人道に対する罪への裁きを伝えている。この作品ではプロットが明確にまとめられ、またヒューマニティーという根底を深く掘り下げる事によって、見終わった後深く考えさせられるものがあった。
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