7 December 2019

The Cave / ザ・ケイブ

by Feras Fayad 2019 Denmark, Syria

シリアの民間活動を行うホワイト・ヘルメットを追ったドキュメンタリー「アレッポ 最後の男たち」の監督フェラス・ファヤードの最新作。シリアのグータにある地下病院の責任者であり若い女性医師のアマニとそのスタッフを2016年から2018年の間追ったドキュメンタリー。グータの街は破壊尽くされているがそれでもまだロシアの爆撃機の攻撃を受け続け人々は地下に要塞を作り生き延びている。そこにある7つの病院の一つは女性医師によって運営されている。毎日大量の死傷者が運ばれまた上空からロシア爆撃機が飛行する爆音が響く。そして次第に病院もその爆撃の標的となり始める。

オープニングのシーンで、山脈を背景にしたグータの街のスカイラインが大画面に映し出される。そして爆撃機の爆音と共に次から次へと街に爆弾が落とされる。また廃墟と化した街中、病院内で爆音に怯えるスタッフたちの姿が映し出される。まるで第二次世界大戦のフィクション映画でみるセットのようだが恐ろしいことにこれは現実の世界の姿である。またあるシーンで女性スタッフが大量に運び込まれる患者をみて「誰も怪我をしていないのに皆死んでいく」と叫ぶ。そこには化学兵器で苦しむ人々の姿があり、そして病院のスタッフもマスクをしながら懸命に応急処置に当たる。あまりにも残酷だ。

この作品上映後の質疑で、ファヤード監督は内戦シリアの状態だけではなくシリア社会で置かれている女性の立場をフォーカスしたかったと述べていた。はじめ7つの病院で撮影を始めその途中でアマニ医師と出会い彼女にフォーカスすることを決めたという。内戦の状況下で現場で医師として活動をするだけでなく、そのシリアに置ける女性への偏見とも戦う女性スタッフ達、彼女達の試練は想像を絶するものである。全撮影フッテージは1000時間に及ぶという。編集段階でエディターがトラウマに陥りスタッフ全員はセラピーにかかりながら作業を進めたそうだ。監督は多くの人に見てもらうことにこの作品の意味があると言っていたがまさしくその通り。数日たった今でも様々なシーンが脳裏に鮮明に焼き付いてる。

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